太陽にちかづく夏がやってくる。七夕の星、落ちないで、空。
また一つ太陽炎(ほむら)焼けにくる夏もちかづく文月の夢は
ちっぽけにまたいでいるか地球には流るる星もむなしい塵か
人口はどんどん増えてまた増えて生まれ変わるかあの星ひとつ
深い河落としてゆくか星空はのみこむいのちいづこへ埋め
降っちゃっていいのか雨は海のうえきらきら光る海が好きだよ
スコールにのみこまれつつあの島はつなみにのまれ残骸なのか
黒い雲スコールのなか走る舟逃げ出すやうな海の道だよ
あっちへとこっちへ進むあの雲はあっというまに島のみこんだ
あっちへとこっちへうねるあの波はあっというまに島のみこんだ
明日のこと忘れてしまうカナリアはちっぽけな声枯らしているか
梅雨の芝ちゅんちゅん歩くすずめらは小さな羽根を躍らせていた
あゝ電話・・・・
わたしにはわたしの時代があるからね。見あげる空は晴れのちくもり・・
紫陽花の枯れてしまった日照りかな鉢のままならいまだに青く
梅雨空の深まりゆくか隣家には紫色の紫陽花の花
曇ったり晴れたり空はいそがしく朝の雨さえ忘れて今は
梅雨空のわがままな顔ながめては気まぐれな空不意打ちの晴れ
今 何時? そらにきいてもわからない。つゆはあまぞら、うすびのじかん。
初恋の熱も冷めたかむすめの手、比べてみたらわたしよりでかい。
むすめにはむすめの時代があるからね。すきとおる夏、背伸びの季節。
正式にバブル後期が終わったと政府は言うか、ぽつねんと聞く。
ながいのかみじかいのかも月日には値札はないが、時代は終わる。
60年、わたしはそんな生きちゃいない。戦争放棄、自然、消滅。
あおあおと芝生のいろのかがやけばアマゾンのいろ知りもせぬかと
おぢさんが読むものを読みばあさんがイカってみても歴然と逝く。
愛の冷えるような感覚は、このだるだる感かもしれない。友が困っていれば、とか、友が悩んでいれば、とか、何かその手の類のことが発生しているならば行って慰めてあげなさい、とかね・・・あるいは友でなくても。それを実践しようとすれば、世の中は不幸の海であることに気づくだけであり、もはやわたしは誰かに癒しを求められるのがいやなのである。そのくせ、ちょっとした小さな友の言葉に救われたりして、偉いなーと感心することも多い。
友情を社会に替えて託しては1+1が友の輪となり
地球上人口の和の増えゆけど輪になる前に不和は広がり
ふわふわと死んでも逢えるいのちなら数えてむなし息というもの
今夜には酔っ払う数増えたれば不機嫌な顔したるわれかな
友情に総和があれば愛情に足して欠けたる天秤のごと
ぼんやりと母親の顔あつまればなにごともなく移ろうか、時
ほんのりとミルクのはなしあつまればなにごともなく育ちたる子ら
朴訥に月日は流れ朴訥に子ら育ちゆく林立のみち
すきとおる肌もちたるも40歳 離れ立つ人 かつての友は
理由など何もないのと微笑んで店の案内六本木の丘
エリートと名のつくばかり男には顔のよく似た妻並びおる
ナルシズム極限にして顔の似る確率の渦わかりにくかりし
二極にぞわかるるものか人生はめぐりゆく罠ふるわせし肩
すんなりと時計の針のまわるような人生もあり。今、何時かな?
刻々と子の育ちゆく谷間には、今日も暮れるか夕焼けの空
微笑みのゆるみぐあいがかそけくも二極めいた陰陽のやう
”負け犬”の数の多さに群れなせば牙さえむなし自由な人ら
少しずつ造花のやうになりゆくか、すきとおりてやかなしき笑みは。
ぼんやりと談笑の声途切れれば別れた後の地下鉄の音
立ち尽くす後姿に声かけし友は見知らぬ人らのひとり
歳月は群れから離れそれぞれの巣に戻りゆく後姿に
翳のある放課後のごとく地下鉄は足音だけが響き別れん
決断を独り奏でる足音は笑みむなしくもそぞろ吹く風
ひらひらと後姿を重ねては友の背なかの吾に別れ告ぐ
竹篭の小さなバスケ抱えては幼子のわれ砂利道あるく
子ども用バッグ売り場の色違いトッポジージョは最後に笑みし
暗がりのオイルショックの言の葉はさびしき雪の祭りにぞ聞く
山のいろ森のいろより青ければ一本道をただ走りゆく
林道の清流の音におびえたる丸太のうえは父の背に乗り
滝の道林の奥の木陰にぞまあたりにする白き水音
リカちゃんの家をつぶすか弟はおむつの尻をどすんと落とし
リカの椅子壊れてみれば発砲のスチロールだに広がりてあり
人形の家のまどりの深ければ紙のうえにぞ階段はあり
ささやかにプラスチックに変わる椅子リカの豪邸ピンクの箱に
くちゃくちゃにセルロイドさえ捨てられし小さな世界ドールの箱に
人形の髪の匂いのおもちゃ箱よごれたあしの靴は消え失せ
二重窓つららの音のなつかしき窓の外には雪の標本
どっさりとつららの落つる物音はしずかな夜もまばゆき昼も
雪のうえよじのぼりては2階まで屋根はつづきぬ雪落とす冬
春の道泥にまみれた残雪は嫌われ者のうずくまる水
ぴしゃぴしゃと急激な春おとづれし北の国にはすきとおる空
真っしろき雪の世界は淡き青かすかな空の地に広がりき
あしあとを残してみれば長靴に雪詰め歩くポプラの小道
黙々と白百合の花倒れれば薄日射すなり芝のうえにぞ
花の房よこたえて百合つぎつぎとさしろき蕾啓きゆくべし
背の高き百合の伸びたる倒れたる風のなき日に雨のなき日に
花の重みゆっくりと今切ろうかと迷ってみれば翌年気にす
地に臥して死す百合はまた咲くだろう。切りて待つのか幻の花。
ひとりっこ あまやかすときあと十年 そのあとながきつきひを思う
旅立ちは吾子が先かとおもってもそのあとながきつきひは めげる
元気っておとななんだと気のせいか老いたるひとぞ日のながければ
あまえっこ 隠しておりしわが娘 すました瞳 よそゆきの顔
ひとりっこ 陽の翳るまで立つ母はひとときながく子らとすごせり
あざやかにネオンか夏か思い出せ、夜は闇路をひっそり照らす。
闇の色カラスの羽もぬばたまの夜には消えて朝つゆを待つ
たまさかに歌詠みになる空模様あっけらかんと梅雨晴れの灰
うっすらと風に吹かれて立ち話子らの次には犬猫のオス
女の子ひげを抜くのか蹴飛ばすか災難つづく小犬のワルツ
廃墟には花咲くつつじよく似合うとぎれとぎれに肩落ちの花
とんがって新芽の夏は垣根さえ花・花・花に隠れて伸びつ
混沌はマリかマリアかアンジェラか・・・ややこしきかな、命のワルツ。
6月は真夏の光春の肌やんわりとした風の吹く道
小雨には濡れてしまえと薔薇は咲く。天高く咲き、地に沿いつ咲く。
つゆくさのひっそりと咲くしづけさをあらくさのなかみいだしぬ朝
あおあおと梅雨の季節のおとづれにあおいろきいろまじりて咲きぬ
行司さえさしちがえたる諍いに今が勝負と貝は泳ぎぬ
おきみやげ小さな雨はうららかにぱらぱらと降りぱらぱらと止む
テレビ無き今日は平和なつゆぞらに陽はさしもどり夏はちかづく
バケツ裏びっしり並ぶなめくじにとりおとしたる驚きの雨
尾のながき鳥は向こうを向きながらわたしの前をゆうゆうと舞う
やせっぽち道路にすわる白猫はこちらを見ては寝ているばかり
ゆうゆうと道を横切る夜猫も朝にはごろり道に寝転び
つゆぞらにゆっくりとした陽がさせば猫も転がる水のなき路
Sサイズ来年吾子は着れるかと中途半端な10代になり
転がりぬ猫を眺めてしみじみとアビシニアンと比べてみたり
にゃあと鳴く小さな牙を浮かせては吾子に似てるとアビシニアンみし
のらねこと毛並みの揃うアビシニアン、道路のうえはインドの老婆
箱のなか牙もちあぐるアビシニアン、みちのうえにはインドの老婆
にゃあにゃあと猫くらべしてかんがえる、人と暮らしとインドの老婆
散乱す夜の雲にぞ曇り空うろこも空も蜘蛛の巣の糸
真からの闇などないとうす暗き空に散らばる蜘蛛の巣の糸
ドアの前大きな蜘蛛が落ちてきてそっと押し出す糸垂れたまま
はろばろと広がる雲をながむれば梅雨待ちていま夜の蜘蛛あり
ヘリコプター飛ぶ音のする昼間には白い粉降る台風の雲
かたばみの群れんと芝に伸びたれば陽はまどろみに降る雨を待つ
ヒマワリの種を蒔こうか真夏には黄色い花の陽の光降る
カラフルな靴下のいろながむれば吾子かわれかで折半を思う
子ども靴われも履けるか吾子の足いつしか伸びてつま先の爪
ゆびちゅぱのクセがなおってほっとしてつかのまに手はわれをおいこし
すこしだけさぼってみればぽろぽろとうたことば消ゆ、脳は五月雨
神さまにさよなら言ってうつむいて見あぐる空に微笑みはあり
あの空が空いっぱいに広がって青く浮べばわれは白雲
そうなんだよね・・・
「僕が神さまを棄てようとしても、神さまが僕を棄てないんです」
そうなんだよね・・・
本当にそのとおり。
そうなんだよね・・・
神さまに空いっぱいに毒吐いて吐いて棄てても空は微笑み
パラパラと冊子をめくり或る科白われの眼の中突き刺すがごと
ストーリー追わなきゃならぬ小説にかったるさあり、しばしとどまる。
流行を追ってるわけじゃないんです。通り過ぎても今が始まり。
新しい旧き月日を省みしわがままだつたあの頃を思う
ノスタルジー?
そんなことではないんです。
捜した空を求めてるだけ。
お仕着せに泣かされてみて脱げもせず死んでも空は青く輝き
骨よりぞ消えてゆかむとすこしずつ灰にもならぬと風のなかには
空のなか風のなかにぞ降りたれば雨より細きクモの巣の無為
グラウンド置き去りにした花壇かな菫の花のかたよりて咲く
意地っ張りマケズ嫌いの裏の妻死してなお花咲かせておりし
以下の短歌は創作である。
ネタ元⇒ 「よろめきません勝つまでは」/ 読書感情ふん!
夏の声聴いて楽しき空蝉の夜迷いのごとひと夏の恋
揺らめいて夏の風には吹かれまじ君知るよしや満月の夜
君ごころ月は知るらん蝉の声鳴くや鳴くやと夜の空の夢
いたずらに身をこごめては立ち止まる傷はもろ刃の光みる夢
深深と夜はしづもり夜の夢はこわごわと泣く別れせし君
追いかけて追われて知るや初恋も遠の世の君わかつ空蝉
鬱よりも鬱かもしれぬと退廃はひそひそとした梅雨空の下
落書きをながめてあるく石畳神に言えぬも壁に耳あり
ぱっぱらとさきいそぎてはがけっぷち逃げ出すやうに夏はちかづく
人生の秋はいつかと尋ねても夏はちかづき梅雨空の下
先生と呼ばれるよりもセンセーと黄色い声も主婦稼業かな
はらはらと文字は躍れり女文字 男なのかと不思議な電子
書き急ぐ気持ちあらばとひねもすはイブと御マリア比較している
沈黙を眼に眺むれば落雷の遠き彼方に喉奥の息
沈黙はわたしのこころ沈みゆく青き光に押し黙る神
ひっそりと夏は過ぎゆく夜は更けぬ人はまどろみ月は輝く
御マリアの何故にと問えばキリストの母だから、とは奇跡は遠く
イブの罪蛇の罪さえ赦された十字架までの捩れた宇宙
たまに思う月は気まぐれあの空に浮んでみたり、雲に消えたり
太陽は規則正しく動くけど月は気まぐれ気のせいなのか
混沌に進みゆくのかスピードは?まだ2000年、瞬きのよう。