December 27, 2003

天国で父に出逢つたときのやう温もりのなかむかへられしわれ

天国で父に出逢つたときのやう温もりのなかむかへられしわれ
炎中くべられる薪あかあかと燃ゆる火種の起こしがたきよ
ヤギ・アイスちょっとクセのあるやうななさそうな味くせになるやも
一滴のバニラ・エッセンス入れるだけほんわりかほる時間の過ぎる
ルナティック呼ぶが悲しき雪解けの庭かげ白き三日月の夜

投稿者 Blue Wind : 11:52 PM | コメント (0)

そしてまた山下達郎流れゆく去年もおぼろおなじこともふ

キャロルスを聴いて楽しきクリスマス浮かれ気分はサウンド次第
棚の中ひさしぶりにみるクリスマス 「こんなCD、あったのね」、なんて
そしてまた山下達郎流れゆく去年もおぼろおなじこともふ
持ってるの絶対絶対あるはずのサルサのキャロル出てきてまほし
クリームの固まりすぎたケーキかな吾子の手作り重き苺よ


もおそこは青空といふ世界ゆえ銀の翼がわれを乗せ去り
円窓の暗がりの中浮かぶまま宙はあおいろ空はつづきぬ
白雲のつみかさなつた黙々とそびえる中も小鳥のやうに
なだらかな空の上にはまっすぐな線などなくも飛行機の雲
雲のなかどうしてだらう明るくも光は映えでゆふぐれも赤


◇ご返歌
なごやみて冬空遠く見上げれば透きとほるよう光冴えるる
スーパーに並ぶさかなの遠くからやってきたなり雨の降る日は
円窓に青い空色うつろえば風は気流に機体をゆらし
窓ごしに睨み遭うなりしろねこの頬の形の体に似合わず
一年の速さに驚く師走かな新年といふ気は遠くなり
ひねもすをぼおっとしてるそれだけでわれを通過すフラッシュの時
つながりの立ち消えゆくも砂のうえかへすがへす波はおとづれ
『声とギター』ジョアンの声の流るるも過ぎた日々へのレクイエムかな
幻とおもえた中に作品のかたちとなるは形見なるやも
勝つたとて憎しみだけがつのりてはとどまることなく人をのみこみ

投稿者 Blue Wind : 01:21 AM | コメント (0)

December 24, 2003

「フィンランドの空から」と書かれた手紙暖炉なか吾子見つけおり無邪気に読みし

戦争は本気でいやとおもう冬クリスマスにも宗教いわれ
点滅をくりかえすだにモミの木のクリスマス・イブこころあてなく
茫洋の果てしなき空つづきやも天使の羽を路上にさがす
「フィンランドの空から」と書かれた手紙暖炉なか吾子見つけおり無邪気に読みし
イラク派兵朝な夕なにくりかへすワイド・ショーなりタレント議員
テロリストやつてきたとてお茶出してもてなしそうないなかの空気

投稿者 Blue Wind : 09:23 PM | コメント (0)

December 23, 2003

沈黙の鳥は黄金に飛びをりし湖水のいろの蒼きまにまに

沈黙の鳥は黄金に飛びをりし湖水のいろの蒼きまにまに
足のない鳥はいつしか飛びおりぬ湖水のなかは幻想といふ
結晶のちりばめたるや描き絵にほのかほるらし生きし匂ひの
ふりおりし風の重なる夢の中虚空の想ひ鳥のゑのとぶ
いのちない石をたずさえ登る山険しき崖のピピ島おもひ
夢の中いつも一緒に遊んだね君はやさしき絵を描きをりし
浮遊する世界の果ては夢のなか見果てぬみちのどこへつづきぬ

◇ご返歌
てふてふの飛びし世界の花園のいずこに揺るるうつそみの人
てふてふのおもひわびしく泣きぬればかそけき声の水面ゆらせり
JapaneseあにたやすけれわれらごとWe Japaneseと断言せしは

わが歌を眺めてほっとすることもある銀河といふ宇宙の果ては

投稿者 Blue Wind : 10:27 PM | コメント (0)

December 22, 2003

くもりぞらふるならふるといつてくれだまつているのはなほつらいから

ことばなど役に立たぬと口しいの恋にも似たる過ぎゆく海彼
堕天使になるつていつた君のことふんわりながむ雲の上から
父といふ無邪気な人を失つてつきあひといふ世間のありき
くもりぞらふるならふるといつてくれだまつているのはなほつらいから
妻といふ目立たぬわれは今朝もあに夫をけとばせどだれもみやらぬ

投稿者 Blue Wind : 10:58 PM | コメント (0)

December 21, 2003

白昼夢ゴジラ歩きの針葉樹身を震わせり戦慄く風に

繁華街歩いているよなネットかな純文学への敷居はたかく
ダダイズム考へるより公文式つづけさせよか迷ふ冬寒
白昼夢ゴジラ歩きの針葉樹身を震わせり戦慄く風に
ミュンヘンの市場の写真ながめおり胸のうずきをかすかにおぼゆ
心海苦労と不幸は違ふというオセロのやうに黒を白とな
わが十代「愛している」と手紙なか百回書かせた記憶のありき
風うなるうなる冬声高らかにかさこそと鳴る窓の外の木
ふうわりと積みかさなる月日とは海より湧き出づ白雲に似て

投稿者 Blue Wind : 12:55 PM | コメント (0)

December 20, 2003

芸性をセカンドアートにことほぎぬ凡庸なわれ空白にあり

曇天の雲の切れ間のあさひよりCDショップのあかりまばゆき
わざわひのふりてやまぬや雪の日をおもひて泣くや小春日和に

◇数年前の冬
当たり屋にやられて師走警察へ駆け込み逃げる酔っ払いかな
3分後家から遠い通り端夫呼び出すフィリピン妻
カタコトの日本語さえもとつぜんに通じないらし警官の前
恐喝と免許停止とえらび泣く夫にあきれども送迎の冬


小野リサとジョアン・ジルベルトを比べてはブルーノートの調べつづきぬ
『声とギター』かそけき調べボサノバは甘きラッパかフレンチジャズへか
『声とギター』アコースティックに響くボッサ、半世紀前のジョアンに逢はむ


気まぐれに融合するは人といふレセプター中とほす幻影
芸性をセカンドアートにことほぎぬ凡庸なわれ空白にあり


平和だと言える朝には霧の中カラスの声の高らか笑う
過酷だと言える夜にはセールスのトークが続く食べ頃の鍋

喉の奥耳までつづくメンソール頭の中へチョコミント味
悲しみにつぶれちまつた悲しみの方程式は化学記号か

はやも来ぬピラカンサにもクリスマス隣家の庭にあかりのともり
街路樹のライトアップの季節かな薄闇の中聖夜もちかし
音もなくしづかにライト瞬けば飾りすくなにリボンの増えゆ

ゆきくれて紛争イラクどうなるや世の乱れたる海外派兵

ずっと前から知っている或る朝は銀の蓋さえ重く閉ざされ
プラズマの走るがごとく中也の詩空中散歩に吾を誘ひ

投稿者 Blue Wind : 01:51 PM | コメント (0)

December 19, 2003

吸つて吐く過酷な楽器ハーモニカ遊びで吹くにはちとつらすぎる

うつらうつらサイトと雑誌をサーフする。メディアといふネットはわがまま

ちつぽけなハーモニカ鳴る朝はトゥーツ・シールマンスの透明なジャズ
吸つて吐く過酷な楽器ハーモニカ遊びで吹くにはちとつらすぎる

曇天の雲の切れ間のあさひよりCDショップのあかりまばゆき


◇ご返歌
ぽぽーぽぽー電池切れかな鳩時計かそけき「ぽっ」は<2>の字で消える

投稿者 Blue Wind : 12:56 PM | コメント (0)

December 16, 2003

バッカスに好かれちまつたすくなひこなバーボンを飲む夜な夜な眠る

しあわせだ、自分は実にしあわせだ とおもふ舟の下には翠水

暴動の鎮圧のため派兵する。イラクの民のなほ怒るらむ

なほ闇はわれを堰かして不埒なる朝焼けを待つ石榴の枝に
煌々と明かりの点るスーパーを出づ車さえ出口塞がる

バッカスに好かれちまつたすくなひこなバーボンを飲む夜な夜な眠る

たまにはね「よいね」と言われてみたいけどボロカス、アート、最後の時間
シンプルにしたつもりなの複合体うごめく記号朝びらきする

偶像をつかふ遣わぬそれだけで別れていつた東へ西へ

投稿者 Blue Wind : 09:33 PM | コメント (0)

December 15, 2003

ぽつかりと浮かんだやうに宇宙から地球をながむ無といふ世界

マッチ棒火薬の匂ひなつかしむ折れた先にも炎ひとひら

われの身にあわずもがなとおもへども災ひの渦人生を変へ
平凡に暮らせる日々をいとおしむ生傷のあと瘡蓋のこし
マンションの瓦礫の下に埋もるるは吾子とわれなり運命の罠

筑波嶺はなほあたたかく日が射せば冬には暖炉の火は燈もされず

ぽつかりと浮かんだやうに宇宙から地球をながむ無といふ世界
枯れ萩の地面にむかひしだれをり吾垂直に地球に立てり
月と日をのんびりながむ古代歴軌道のなかにときはうつろふ

ふるさとを持たないわれといふ人はおさなき街は夢の想ひ出

あのみちはもうひろがつてくるまだけ走るのをみゆ山のまにまに

復興の最初にゐでた話題には新図書館の建設なりき
街並みのつぎつぎかはる六甲のもとにかへらで日は過ぎるらし
腹立ちと苛立ちつのる復興の話の中でうららにあそぶ
家よりも公共施設大切と置忘れたる仮設住宅
復興といふがかなしき行政かなにをもちゐで復興といふ
観光の街のかなしき運命かな来る人を待ち去る企業かな
経済の復興するを復興と呼ぶがかなしきはろばろの街

無法地区治めてかなし自衛隊出立するを止められもせず
経済のほろぶるなかれ軍送る復興といふ嘘みえかくれ

無人駅六甲ライナー乗りてやも背なに聞こえし立ち退きのこゑ
場所による立ち退きゆかむ人の利を三田の仮設住む人もなく
陽だまりを孫連れあるく義父のあと会釈しかへす見知らぬひとへ
想い出はみちゆくひとにあるやもと記憶のなかにしみゐるいのち
苦渋なる決断もまた孫のためはろばろ生きよ明るく生きよ
いのち火をつたえそだてし大地かな宇宙の果てへ夢はつづきぬ

いつの日かつちにかへりしわれの身もしだれるやうなやはらな萩葉
散髪をすませたばかり寒椿冬の風吹く通りにこごめり


◇ご返歌
みじかき日夕まぐれ待つ寒椿落つる紅やけにあかるゐ
明け空にやけにかなしき霧の立つまぶしき光輝く日ほど
灰色の空の下には紺碧の暗い荒波島影をのみ
ちつぽけな点滅ライト星の中夜間飛行のどこへ向かふか
ねこなのよ自分といふ人犬などは眼中に無くさかなもはまぬ
平日をのんびりすごす月曜日ハンカチ渡し吾子時計かな
立ち読みでJJひろつてみるけれど見慣れた顔の消えゆ もどしぬ
『イパネラの娘』聴く午後われさえも生まれる前の歌にときめき
キーボードなにをえがくか吾といふ人形のごと君はおもへり
隠れ家のフセインのさまぬばたまの闇のやすらぎ光憂くらむ

___________

明石とは外のことだと今知るや内なるこゑの聞こえざらまし
神戸よりわずかにゆられ走る先何ごともなく街はたたずみ
寄付金を並んでもなほ10万円家の焼けたる庭の水がに

投稿者 Blue Wind : 03:50 PM | コメント (0)

December 13, 2003

ほこり舞ふさなかの街も海はただキラキラひかる。船はゆきかひ。

きらめきに落つる虹色プリズムをかざす窓かな空は時雨るる
砂時計めずらしきかな吾子ながむひょろりと並ぶ水時計なり
ひろやかに薔薇の垣根の冬の道うららな影のしづかに咲けり

ほこり舞ふさなかの街も海はただキラキラひかる。船はゆきかひ。
降り立てばポートアイランド土の上高速道路の倒れたる道
窓の外見知らぬ街の流れたる電車は走る山はつづきぬ
マキシンの帽子も遥か想い出の箪笥の中にひっそり眠る
震災の街をや出たる溜め息の安堵の中にドアは閉じられ
貨物船広きデッキで見おろせば六甲山のみどりまほろに
頑なに孫をいだきて昼寝する義父の向こうに泣き声響き
新天地ひらけてゆくや街並みのかはるはやさの神戸に負けぬ
ケ・セラ・セラなるようになるセラヴィーとラテンのリズムで日はまた昇る
飛び立とうやがては春の野の花の風に運ばれ咲き乱るる園
もうあれは終わったこととピリオドを一つ落として空白の声

投稿者 Blue Wind : 04:48 PM | コメント (0)

December 10, 2003

しおれたる冬の薔薇三つ揺られたるかそけき枝に蕾の凍る

ひねもすのやること多きなんとなく過ぎゆく師走木馬の揺れる
影法師どこまでのびる冬の道花咲きおはる薔薇の木高き
しおれたる冬の薔薇三つ揺られたるかそけき枝に蕾の凍る
リースみゆ 街も風さえクリスマス・・・愛さえ燃えゆ蝋燭の火に
真夜中のくもりガラスのむこうには赤いランプのしづかに走る

投稿者 Blue Wind : 02:24 AM | コメント (0)

December 08, 2003

白熱のなお狂いたる風の吹く雨季の砂波われは濡れをり

餅つまみパクッとほおばる吾子の顔おたふく風邪のあどけなきごと
草枕旅の想ひを詠えども羽枕抱く寝返りの宿
休みの日きちんとおなかのすく朝にあわてて起こしすたすたもどる

白熱のなお狂いたる風の吹く雨季の砂波われは濡れをり


◇ご返歌
君は言う「こころが大事」軽やかに・・・飾りはやめて痛みゐる夜
波の中歩く砂浜透明のかなしいくらい空をうつせり
冬の夜のすみゆくたかき空遠く点滅しせり飛行機を追う
ちつぽけな勝利の意味の儚さを苦しみのなかあえぎ知り立つ
休みの日うつらうつらとまちがうは目覚まし時計の音のせいかな
したたかな野花のやうに生きる意味花の咲きたる冬に問ふても
石段を落ちないようにすべらずにのぼりきれたら苔は祝える

投稿者 Blue Wind : 12:58 PM | コメント (0)

December 05, 2003

ラブソング静かに流れる晩秋に歌を失くしたこおろぎをみゆ

窓ガラス雨あとのこる夕暮れにワイパーの音で発進しせり
暑いとか寒いとかなど忘らるる今の季節の汗ばむ部屋よ
真夜中に姑からの長電話めずらしきこともあるとおもへり
「3日おき髪を染めたりしてるの」とそれが元気な合図にきこゆ

真夜中にぽっかり浮かんだ空間は白き花さえシュールにかえる
淡々と夜中に響くメロディはやさしき声をリズムにかえる
夫の荷物ほとんど捨てたわがいえのしまわれたるは過去のわたしか
あんな歌こんな歌など詠むうちに藻屑と消えるわたしといふひと

気分屋の気分次第で歌を詠むジャポップさえ今があるから

ラブソングあたしと一緒に変わろうよそのために今聴いているから
ラブソング聴いたことすらない人に何を語るも無駄と知るなり
ラブソングいつも流るる人の海どぶねずみ色の人の心にも

恋人は素知らぬ顔で聴いている奏でる音はその日のふたり

「あの景色、覚えているか」と君のいふ透明な海いくつあるやも
「あの曲を、覚えているか」と君のいふ80年代のMTVかな
あの頃はふたりでいつも聴いていたクリスマスにはラパパンパン

いつの間にボジョレヌーボー冷蔵庫ことしも秋の終わりを告げる

ラブソング静かに流れる晩秋に歌を失くしたこおろぎをみゆ
部屋の中しづしづ歩くこおろぎのどこから来たか不思議なドアか

しろねこの逆襲といふ秋風の吹くにまかせて夜は更けゆく
脅迫をかきならべたる掲示板みゆ人ありき風はひろまり
みる人のこころの中までのぞけぬはそれぞれおもふ風はふきぬけ
きらふとは徹底的にきらふこときらふきもちの文字にあらはれ
いまもなほ徹底的にきらふわれおまえなどなどじごくへおつる
紛争は暗き闇夜によくにあふゆくこともない星へ飛ばせと
文人の筆もちたたかふ魂の綴れ織なりクロスといふもの

歌詠みは悲しいのですあはれですせつないのです愛なき歌は
歩くみち花は咲けども枯れ果てる冬はおとづれ枯れ葉舞い散る
ビオロンの弾きこなせずは神経のさかなでる音両刃のつるぎ
自由とはなにを気にするわけでなくそこにはだれもわれさえもなく

せつなさはしづかに流るる曲のやう音だけあるよこの世界には
何もない流るる音の真実をいつかどこかで耳にするやも
ざわめきのひろがる店のかたすみで曲は聴こえる霧の中の音
草の音風の音かな晴れ渡る吹き渡るみち明日もあるらし
雑音の気になるやうではわれはまだ真実の音とおざかりける

すきとほる世界の果てはそらたかくすみわたるやうすみわたるやう
神さまとおはなしせよと言はれては八木重吉の詩のひとひら
ひとひらの言葉の中にひとひらのかけらのたましいわれを誘ふ
地獄まで堕ちてしまつたたましひは人の愛ではすくえないらし

恋人のゆきかふ街の明るさよ冬のさむさも人を寄せあふ
ひとひらの真実の愛ふりおつる街はかがやきひとはゆきかふ

しあわせはいつもいっしょにいてくれるやさしさのなかほのかほるらし
若き日の孤独のなかもふたりだけいまはうつそみいのちをそだて
好きなものあつめて暮らすたのしみをさわさわそよぐ翠の風にも

突然に難聴なるほどはたらきつ何が悲しや夫といふひと
結核のかげのあるのに気がつきつもらいいのちと今をことほぐ
明日のことどうなることもわからぬやいまひとときをつぶやきとかへ
すくすくと育つむすめのうれしさよいつまで汝といられるものかと
しあわせの蜃気楼ゆれかげろふもいまがすべてとしあわせを噛む
晴れた日も曇りの日にも雨の日もゆらゆらゆれる常緑樹かな
生きるつていろんなことがあるんですわたくしだけではないらしいです
そんなことわかつているといふひとの不幸な話 聞きたくないの
悲しみにくれて生きるよりかろやかに微笑んでいる吾が好きといふ
明日のことわからぬのなら好きなもの好きなことだけ好きな人たち

洗濯機われのかはりにありがとう君がいるからわれは詠へり
真夜中にしづかにうなるドラム式サウンド甘く今宵も流るる
ささやかなしあわせのなかちつぽけなよろこびのある一度の人生
ちつぽけなうねりのなかで洗わるる洗濯物の眩暈の渦よ

すなもじの波にさらはれ消えゆかむ白き泡さえ蜃気楼かな
気まぐれに風に吹かれし砂浜のタオルは飛ばず向かい風なり
あれこれとむづかしいこと飽きたならささやかなわれ浜辺に座る
シルエット描きて座る砂浜につどふ人等の飽くことなきか
落ち日さす夕暮れの浜見知らない人たちのなかわれも座れり

いくつもの駅をみおくり汽車はゆくそういふ旅をしてみたいけど
りんさんになりたいなどとジョークだと怒つていたら本気がかなし
ずたぼろに捨ててしまえとかんたんに切って落とすこころといふもの
あいことばかわし「死んでもいいんだよ」ほうっておくのがくすりといふ

揺らぎみる月の光よおぼろなる闇夜をしろく沁みゐらせたる
儚くも消えゆくほむらたやすけれコンロの火にも未来はありき
やさしさもなさけとならば底なしの沼におぼれる睡蓮のごと
年ゆきた人と話すは過去のこと今はなにをぞするとおもひし

風吹きぬ冬の小道に揺れている葉のさやさやと息吹をうたふ

おさなき日夢見たおもひああこれがうつつとかはりシナプスとなる
われはゆくおさなき頃のわれの夢うつらうつらとうつつの中で
あの詩人 この詩人たち 3D うつらうつらと夢から現
どつぷりと記憶の中に咲く花のわれをしづかにすいよするなり
無条件に惹かれる花の咲くみちのたちどまりたるみつばちのごと

光なかしづけさのなか聴こえてるフィオナの歌のやはらかき声
ひねもすを優雅に詠うよろこびをバーチャルによりまなびて候
しあわせの青い小鳥をもとめては空よりいづる日々にうづもる

純粋にハートのなかをのぞいてもエースが一枚ひらりと落つる
ありそうでなにもなさそなこころもようえがいてきえる雪の舞みゆ
てのひらに刻んできえる一片のしろき雪さえふりつもるみち
あたたかい冬のすぎゆくひねもすをゆきあそびする電子文字かな
キーボード叩いてえがく電子文字やはらきにもおににも見えゆ
やはらかく生きるもよしと邪魔をするそれが知識といふものらしい
いくつものうつろひの中みうしなう虹の色さえみるにまかせり
画面上マップをおいて示したいわれといふひとなにをやかたらむ
しあわせを定義するならひねもすを好きなことだに費やせること
日本語のかたきリズムをやはらかき響きにかへるシャンソンかな
ささやかなおはなしのなかかはりゆく流るる息のゆるりときこゆ

あなたとはおはなししたくないのよと伝えることもおはなしといふ
憎しみに汚染されてあの人もこころないままゆくあてどなく
憎しみのオーム返しの感情をオートリピート画面に浮かぶ
やさしさをそっとみまもる人もいるピアニッシモに耳をかたむけ

はや師走やはらかき日のすぎゆけば冬が春にもおもふまどろみ

うねる波荒波の浜岩礁の潮の流れに寄る人のなく
掲示板いくつつぶして変はらずは人のこころの闇まで消えぬ
初期化して過去は消えれど消え去らぬ脳の初期化はいかなるものぞ
早鐘にサイレンの音鳴り響く未来永劫記憶に残り
吐き気する想いをつづるには電子文字のこの掲示板がいい

こうやつて一人の世界が守られる自分の世界はピュアにのこして
世の中に素敵な人のあまたいるなぜにいないの電子の世界
教え子のタレントになり自慢されたしかにかわいい男の子かな

10代の恋に恋して憧れてそういう時代をなつかしむなり
ほんわかと娘と恋の絵本読むちゃちゃの入るおこちゃまかな
言葉のない最後のページ意味違ふよおく読んでと一人で読ます
母さまは綺麗じゃないと叱られる夫よりうるさい一人娘よ

BBSうちのサイトに来ないでと次第に消えるハイパーリンク
ハンドル名勝手につかわれ気に障る名さえ捨てるかインターネット
空想の世界で遊ぶ人形の描くこころの一方通行
恋歌をうたはれることセクハラといふが本音の女流歌人ら
万葉の時代をしのぶ恋文はもはやセクハラ真実なきは
名をつかふあたかもたれかいるやうに虚空のなかはがらんどうなり

平井堅歌いすぎない溜め息の流るるやうなリズムのなかへ
避けていたジャポップの音ことばの海のひろがりをみゆ
スコールよ雨は冷たいものなのと訊いても空は黒雲ながれ
ユーミンのむかし歌つた曲だつた冷たい雨をさがせど逢えず
冷たさはプールサイドのシャワーかな陽のない水の情け知らずよ
未来へとつづく道さえとおまわりすれちがふさま未来のわれよ
おわらない世界の果ての未来かな明日はどこへとつづくものかな
アメジストみやげものやで光つてる紫の色にあふひとなき

ウィルスをつくるものあり集めては喜ぶもののかなしきさまかな
パラノイアの逆恨みらしジャンキーの荒れ狂うさま電子に浮かび
人形を捨ててしまえばおわりかなのこる妄想あの世へもちゆけ
粗大ゴミ誰が捨てるかネットかな環境破壊も電子へ寄する

対岸の火事にも似てし怒鳴り声いづこの岸へつづくものかな
機械文字書き捨てごめんどうでもとあしらうことをおぼえてしまひ
微笑みは好きな人にだけ浮かぶものドライな風を背に受け流し

掲示板ななめに読んでふきだしてひまな昼どき退屈しのぎ
モーリヤック読もうかどうか迷ひつつつまらぬ歌でときはすぎゆく

投稿者 Blue Wind : 01:31 AM | コメント (0)