December 05, 2003

ラブソング静かに流れる晩秋に歌を失くしたこおろぎをみゆ

窓ガラス雨あとのこる夕暮れにワイパーの音で発進しせり
暑いとか寒いとかなど忘らるる今の季節の汗ばむ部屋よ
真夜中に姑からの長電話めずらしきこともあるとおもへり
「3日おき髪を染めたりしてるの」とそれが元気な合図にきこゆ

真夜中にぽっかり浮かんだ空間は白き花さえシュールにかえる
淡々と夜中に響くメロディはやさしき声をリズムにかえる
夫の荷物ほとんど捨てたわがいえのしまわれたるは過去のわたしか
あんな歌こんな歌など詠むうちに藻屑と消えるわたしといふひと

気分屋の気分次第で歌を詠むジャポップさえ今があるから

ラブソングあたしと一緒に変わろうよそのために今聴いているから
ラブソング聴いたことすらない人に何を語るも無駄と知るなり
ラブソングいつも流るる人の海どぶねずみ色の人の心にも

恋人は素知らぬ顔で聴いている奏でる音はその日のふたり

「あの景色、覚えているか」と君のいふ透明な海いくつあるやも
「あの曲を、覚えているか」と君のいふ80年代のMTVかな
あの頃はふたりでいつも聴いていたクリスマスにはラパパンパン

いつの間にボジョレヌーボー冷蔵庫ことしも秋の終わりを告げる

ラブソング静かに流れる晩秋に歌を失くしたこおろぎをみゆ
部屋の中しづしづ歩くこおろぎのどこから来たか不思議なドアか

しろねこの逆襲といふ秋風の吹くにまかせて夜は更けゆく
脅迫をかきならべたる掲示板みゆ人ありき風はひろまり
みる人のこころの中までのぞけぬはそれぞれおもふ風はふきぬけ
きらふとは徹底的にきらふこときらふきもちの文字にあらはれ
いまもなほ徹底的にきらふわれおまえなどなどじごくへおつる
紛争は暗き闇夜によくにあふゆくこともない星へ飛ばせと
文人の筆もちたたかふ魂の綴れ織なりクロスといふもの

歌詠みは悲しいのですあはれですせつないのです愛なき歌は
歩くみち花は咲けども枯れ果てる冬はおとづれ枯れ葉舞い散る
ビオロンの弾きこなせずは神経のさかなでる音両刃のつるぎ
自由とはなにを気にするわけでなくそこにはだれもわれさえもなく

せつなさはしづかに流るる曲のやう音だけあるよこの世界には
何もない流るる音の真実をいつかどこかで耳にするやも
ざわめきのひろがる店のかたすみで曲は聴こえる霧の中の音
草の音風の音かな晴れ渡る吹き渡るみち明日もあるらし
雑音の気になるやうではわれはまだ真実の音とおざかりける

すきとほる世界の果てはそらたかくすみわたるやうすみわたるやう
神さまとおはなしせよと言はれては八木重吉の詩のひとひら
ひとひらの言葉の中にひとひらのかけらのたましいわれを誘ふ
地獄まで堕ちてしまつたたましひは人の愛ではすくえないらし

恋人のゆきかふ街の明るさよ冬のさむさも人を寄せあふ
ひとひらの真実の愛ふりおつる街はかがやきひとはゆきかふ

しあわせはいつもいっしょにいてくれるやさしさのなかほのかほるらし
若き日の孤独のなかもふたりだけいまはうつそみいのちをそだて
好きなものあつめて暮らすたのしみをさわさわそよぐ翠の風にも

突然に難聴なるほどはたらきつ何が悲しや夫といふひと
結核のかげのあるのに気がつきつもらいいのちと今をことほぐ
明日のことどうなることもわからぬやいまひとときをつぶやきとかへ
すくすくと育つむすめのうれしさよいつまで汝といられるものかと
しあわせの蜃気楼ゆれかげろふもいまがすべてとしあわせを噛む
晴れた日も曇りの日にも雨の日もゆらゆらゆれる常緑樹かな
生きるつていろんなことがあるんですわたくしだけではないらしいです
そんなことわかつているといふひとの不幸な話 聞きたくないの
悲しみにくれて生きるよりかろやかに微笑んでいる吾が好きといふ
明日のことわからぬのなら好きなもの好きなことだけ好きな人たち

洗濯機われのかはりにありがとう君がいるからわれは詠へり
真夜中にしづかにうなるドラム式サウンド甘く今宵も流るる
ささやかなしあわせのなかちつぽけなよろこびのある一度の人生
ちつぽけなうねりのなかで洗わるる洗濯物の眩暈の渦よ

すなもじの波にさらはれ消えゆかむ白き泡さえ蜃気楼かな
気まぐれに風に吹かれし砂浜のタオルは飛ばず向かい風なり
あれこれとむづかしいこと飽きたならささやかなわれ浜辺に座る
シルエット描きて座る砂浜につどふ人等の飽くことなきか
落ち日さす夕暮れの浜見知らない人たちのなかわれも座れり

いくつもの駅をみおくり汽車はゆくそういふ旅をしてみたいけど
りんさんになりたいなどとジョークだと怒つていたら本気がかなし
ずたぼろに捨ててしまえとかんたんに切って落とすこころといふもの
あいことばかわし「死んでもいいんだよ」ほうっておくのがくすりといふ

揺らぎみる月の光よおぼろなる闇夜をしろく沁みゐらせたる
儚くも消えゆくほむらたやすけれコンロの火にも未来はありき
やさしさもなさけとならば底なしの沼におぼれる睡蓮のごと
年ゆきた人と話すは過去のこと今はなにをぞするとおもひし

風吹きぬ冬の小道に揺れている葉のさやさやと息吹をうたふ

おさなき日夢見たおもひああこれがうつつとかはりシナプスとなる
われはゆくおさなき頃のわれの夢うつらうつらとうつつの中で
あの詩人 この詩人たち 3D うつらうつらと夢から現
どつぷりと記憶の中に咲く花のわれをしづかにすいよするなり
無条件に惹かれる花の咲くみちのたちどまりたるみつばちのごと

光なかしづけさのなか聴こえてるフィオナの歌のやはらかき声
ひねもすを優雅に詠うよろこびをバーチャルによりまなびて候
しあわせの青い小鳥をもとめては空よりいづる日々にうづもる

純粋にハートのなかをのぞいてもエースが一枚ひらりと落つる
ありそうでなにもなさそなこころもようえがいてきえる雪の舞みゆ
てのひらに刻んできえる一片のしろき雪さえふりつもるみち
あたたかい冬のすぎゆくひねもすをゆきあそびする電子文字かな
キーボード叩いてえがく電子文字やはらきにもおににも見えゆ
やはらかく生きるもよしと邪魔をするそれが知識といふものらしい
いくつものうつろひの中みうしなう虹の色さえみるにまかせり
画面上マップをおいて示したいわれといふひとなにをやかたらむ
しあわせを定義するならひねもすを好きなことだに費やせること
日本語のかたきリズムをやはらかき響きにかへるシャンソンかな
ささやかなおはなしのなかかはりゆく流るる息のゆるりときこゆ

あなたとはおはなししたくないのよと伝えることもおはなしといふ
憎しみに汚染されてあの人もこころないままゆくあてどなく
憎しみのオーム返しの感情をオートリピート画面に浮かぶ
やさしさをそっとみまもる人もいるピアニッシモに耳をかたむけ

はや師走やはらかき日のすぎゆけば冬が春にもおもふまどろみ

うねる波荒波の浜岩礁の潮の流れに寄る人のなく
掲示板いくつつぶして変はらずは人のこころの闇まで消えぬ
初期化して過去は消えれど消え去らぬ脳の初期化はいかなるものぞ
早鐘にサイレンの音鳴り響く未来永劫記憶に残り
吐き気する想いをつづるには電子文字のこの掲示板がいい

こうやつて一人の世界が守られる自分の世界はピュアにのこして
世の中に素敵な人のあまたいるなぜにいないの電子の世界
教え子のタレントになり自慢されたしかにかわいい男の子かな

10代の恋に恋して憧れてそういう時代をなつかしむなり
ほんわかと娘と恋の絵本読むちゃちゃの入るおこちゃまかな
言葉のない最後のページ意味違ふよおく読んでと一人で読ます
母さまは綺麗じゃないと叱られる夫よりうるさい一人娘よ

BBSうちのサイトに来ないでと次第に消えるハイパーリンク
ハンドル名勝手につかわれ気に障る名さえ捨てるかインターネット
空想の世界で遊ぶ人形の描くこころの一方通行
恋歌をうたはれることセクハラといふが本音の女流歌人ら
万葉の時代をしのぶ恋文はもはやセクハラ真実なきは
名をつかふあたかもたれかいるやうに虚空のなかはがらんどうなり

平井堅歌いすぎない溜め息の流るるやうなリズムのなかへ
避けていたジャポップの音ことばの海のひろがりをみゆ
スコールよ雨は冷たいものなのと訊いても空は黒雲ながれ
ユーミンのむかし歌つた曲だつた冷たい雨をさがせど逢えず
冷たさはプールサイドのシャワーかな陽のない水の情け知らずよ
未来へとつづく道さえとおまわりすれちがふさま未来のわれよ
おわらない世界の果ての未来かな明日はどこへとつづくものかな
アメジストみやげものやで光つてる紫の色にあふひとなき

ウィルスをつくるものあり集めては喜ぶもののかなしきさまかな
パラノイアの逆恨みらしジャンキーの荒れ狂うさま電子に浮かび
人形を捨ててしまえばおわりかなのこる妄想あの世へもちゆけ
粗大ゴミ誰が捨てるかネットかな環境破壊も電子へ寄する

対岸の火事にも似てし怒鳴り声いづこの岸へつづくものかな
機械文字書き捨てごめんどうでもとあしらうことをおぼえてしまひ
微笑みは好きな人にだけ浮かぶものドライな風を背に受け流し

掲示板ななめに読んでふきだしてひまな昼どき退屈しのぎ
モーリヤック読もうかどうか迷ひつつつまらぬ歌でときはすぎゆく

投稿者 Blue Wind : December 5, 2003 01:31 AM
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