December 15, 2003

ぽつかりと浮かんだやうに宇宙から地球をながむ無といふ世界

マッチ棒火薬の匂ひなつかしむ折れた先にも炎ひとひら

われの身にあわずもがなとおもへども災ひの渦人生を変へ
平凡に暮らせる日々をいとおしむ生傷のあと瘡蓋のこし
マンションの瓦礫の下に埋もるるは吾子とわれなり運命の罠

筑波嶺はなほあたたかく日が射せば冬には暖炉の火は燈もされず

ぽつかりと浮かんだやうに宇宙から地球をながむ無といふ世界
枯れ萩の地面にむかひしだれをり吾垂直に地球に立てり
月と日をのんびりながむ古代歴軌道のなかにときはうつろふ

ふるさとを持たないわれといふ人はおさなき街は夢の想ひ出

あのみちはもうひろがつてくるまだけ走るのをみゆ山のまにまに

復興の最初にゐでた話題には新図書館の建設なりき
街並みのつぎつぎかはる六甲のもとにかへらで日は過ぎるらし
腹立ちと苛立ちつのる復興の話の中でうららにあそぶ
家よりも公共施設大切と置忘れたる仮設住宅
復興といふがかなしき行政かなにをもちゐで復興といふ
観光の街のかなしき運命かな来る人を待ち去る企業かな
経済の復興するを復興と呼ぶがかなしきはろばろの街

無法地区治めてかなし自衛隊出立するを止められもせず
経済のほろぶるなかれ軍送る復興といふ嘘みえかくれ

無人駅六甲ライナー乗りてやも背なに聞こえし立ち退きのこゑ
場所による立ち退きゆかむ人の利を三田の仮設住む人もなく
陽だまりを孫連れあるく義父のあと会釈しかへす見知らぬひとへ
想い出はみちゆくひとにあるやもと記憶のなかにしみゐるいのち
苦渋なる決断もまた孫のためはろばろ生きよ明るく生きよ
いのち火をつたえそだてし大地かな宇宙の果てへ夢はつづきぬ

いつの日かつちにかへりしわれの身もしだれるやうなやはらな萩葉
散髪をすませたばかり寒椿冬の風吹く通りにこごめり


◇ご返歌
みじかき日夕まぐれ待つ寒椿落つる紅やけにあかるゐ
明け空にやけにかなしき霧の立つまぶしき光輝く日ほど
灰色の空の下には紺碧の暗い荒波島影をのみ
ちつぽけな点滅ライト星の中夜間飛行のどこへ向かふか
ねこなのよ自分といふ人犬などは眼中に無くさかなもはまぬ
平日をのんびりすごす月曜日ハンカチ渡し吾子時計かな
立ち読みでJJひろつてみるけれど見慣れた顔の消えゆ もどしぬ
『イパネラの娘』聴く午後われさえも生まれる前の歌にときめき
キーボードなにをえがくか吾といふ人形のごと君はおもへり
隠れ家のフセインのさまぬばたまの闇のやすらぎ光憂くらむ

___________

明石とは外のことだと今知るや内なるこゑの聞こえざらまし
神戸よりわずかにゆられ走る先何ごともなく街はたたずみ
寄付金を並んでもなほ10万円家の焼けたる庭の水がに

投稿者 Blue Wind : December 15, 2003 03:50 PM
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