November 24, 2003

せいいっぱい何かをしようともがいてもシンクロニティをもとめている吾

共鳴・共感という幻の気分の今日の歌

自分のことを言われてるような気がしてつい本をハタッと閉じた気がする
脇川飛鳥さんの歌

コメント「思い当たる、自分の事みたい、という瞬間を大切にしたいですね。」

★歌葉より
http://www.bookpark.ne.jp/utanoha/

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あの頃の自分のように懐かしむ娘に言われ気がつく自分
あの人のどうしてるかと思い出すチクリと痛む心の奥が
せいいっぱい何かをしようともがいてもシンクロニティをもとめている吾

投稿者 Blue Wind : 12:58 AM | コメント (0)

November 21, 2003

その糸は生きるにいらぬと捨てられた人形にも似て匂ひとかはる

四方山話と今日の歌
せつなさを聞かせ続けたサボテンに見たことのない花が咲いたよ
天野慶さんの歌

コメント「せつなさは甘く苦くてサボテンに聞かせるしかなかったのです。」

★歌葉より
http://www.bookpark.ne.jp/utanoha/


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というわけで、とうとう自分専用の詩歌集をつくってしまいました。
http://bluewind.oops.jp/cgi-bin/anthology/anthologys.cgi

「また、りんさんは自分のためだけに〜!」
って叱られるでせうか・・・?

うたかたの甘くせつない恋歌はわがこころだに響く音なり
あまつさえ人の数だけ恋のある世界はひろくひとりしまえり
恋歌をたれに聞かせてどうなるや恋の話は友と長電話
恋愛の話ばかりに明け暮れた友と話すは姑のこと

なんか、時を感じるな・・・

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◇お勧め本

『君のいる場所』
作・絵:ジミー(幾米) 訳:宝迫典子
小学館

せつないラブストーリーの絵本。

金城 武の主演で映画化されるみたいですね。
金城くんというのが、自分の大昔の彼氏にそっくりなので驚いたことがあるんです・・・初めて見た時。
すっごく面食いだったことがわかるかも。(ほほほ)

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気がつけばセオリー通りに生きている行動体の運命なるかな
行動を変容できず苦しむを箱につめこみ文字に置き換え

儚くも散りゐてしまうかもしれん世俗の垢にまみれるをきらふ
こんなでは生きていはけぬといはれしも時早すでに半生をすぎ
若き日は憂きことおおく迷い道迷いながらも月日は流れ
迷い道もういいだろうといふ意味は生かされているわれもおばさん
ひねもすを空中散歩にあけくれどよすがにかへす花の咲きたる
不可思議におもえどこれも運命と亡き伯母いふたセリフをおもふ
そのやうに生まれたならばそのやうに生きてゆくしかみちはないらし
手に汗しはたらくことのなきわれの老後を憂くもいまをいきたる
長生きのせぬ家系にぞ生まれては案ずることのすくなき身かな
ぼろぼろになつたとしてもわれはなお詠むことだけに明け暮るるやも
きつかけはなんであらうとひねもすはのたりのたりと歌に変はれり
概念の浮遊する世界まぼろしのわれは生きたる歌のなかにぞ
これもまたひとつの運命くつきりと雲なき空の星座のやうな
歌もまたひとつの手段にすぎぬやもすぎゆくことのふりかえる間の
毒の息枯らさうとても石の花ときはうつろふ陽炎のごと
一枚の写真に見たり石の花好きともおもへぬガーベラの夢
石の花咲かせてしまえシンクロのちいさき萌し糸たぐりよす
年ゆきて話し相手に困るやもそう思うても今と変わらぬ
幼き日出逢つた人の記憶にも似ているやうななつかしの詩
文庫などほとんど捨ててしまつたが記憶のなかにしみゐる四十万
たぐりよす記憶の糸の先にあるねむりた過去の今よみがえるらし
その糸は生きるにいらぬと捨てられた人形にも似て匂ひとかはる
セルロイドなにも語らぬ硬きままなぜに微笑む誰もいずとも
子どもとはいのちなきものふりまわしおのが生きるをくちにたしかめ
世の中は大きな悪に驚かず小さな悪に大いに騒ぐ
ちっぽけな蚊をおいまわす勢いであなたの頬をたたいてみたい

クリスマスちかづく時期だけつかおかな声をかけあふBBSかな
どうしてかウキウキとするクリスマス街がきらきら光るからかも
なにげなくつづく日常とりもどす平和のベルの高らかに鳴る
木枯らしの吹く冬の日のいろどりのリースをながむ子等と歩きつ

トランタッタなにを思い立ったかや巻き舌の音練習しせり
エンジンの巻き舌のやうな音のするぱたりとしまる郵便ポスト

幾たびかすれちがふさまさびしけれ待合室によこたはるひと
車椅子のりて電話で話すひと笑い声さえひまをふくみし
今日の日の終わりを告げる24時始まりといふ0時に鳴る鳩

足りぬからもとめてあまる愛情の総和をもとむ日時(とき)といふもの
愛情に方程式があるのならつるかめざんで計算をして

水のある風景あまくせつなくば水面ゆらして風は吹きゆく
なだらかな山のうねうね続きたる赤い世界よ熊本らしき
なんなれば微笑みひとつ風まかせちょつとちがふでも気にしない
かへすがへす波のいろどり空の色エンジン音の背につたわりし
すみわたる雲なき空を見あげれば星座は光る四方の家路に
断食でワールドカップにのぞむとはエジプト人の摩訶不思議かな
真夜中にシャーデー聴いて歌を詠む昼には昼の歌の聴こえり
石段のかすかな隙に根づきたる可憐な小菊あわく揺れたり
アンテナで受信できないテレビかな妨害電波の空に飛び交い

悉くみちをつぶされゆくなかで残雪のごと春はおとづれる
美しく降る雪はなほ降りつもるあしあとつづくうえを歩きつ
ほんのりと青く光れる白き雪影といふ色ま白き大地
紫の陽射しの中につつまれて生きることをぞ透明といふ

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酔いまかせここまでやるかとおどおどとこわいものみてふきだすもよし
恋歌を牌を投げ出すやうに投げ明日なき身やもやつすものがな
吐き出すももののあはれとふき出せばにきびのやうな恋歌となり
つぶせどもこんこんとわく白き膿みああ青春の面差しなるかな

投稿者 Blue Wind : 02:30 AM | コメント (0)

November 18, 2003

人生は偶然のなかいのちあり不思議のなかにみちはひらけり

ああまた偶然だと思う今日の歌

命なき石の悲しさよければころがりまた止まるのみ
中原中也の歌

コメント「命あるかぎり、前に進めます。」

★歌葉より
http://www.bookpark.ne.jp/utanoha/


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中也は15歳の時に短歌を詠み始め、それが原因で落第してしまったらしい。
つまりは、その時にすでに自分が詩人体質であることを確認したのだろう。
自分的には、石に命を与えてはいけないような気がするけれど、単なる石を見ても美しいと思ったり、恐ろしいと思ったり、石像になってみたり、人間のクリエートするものには天然の石とは違った人間の意志というものが存在するために、表現するということは想念やこころを具現化することなのかもしれない。
花は生きているから咲く。
でも命のないはずの石でさえ花が咲く。

石の森歩いてみたいガウディのみ霊のねむる教会のなか
人生は偶然のなかいのちあり不思議のなかにみちはひらけり

狂人の打ち鳴らす鐘高らかに鏡のように光を弾き
人格をすでに亡くしたその人のうつろいゆくはみちゆく人ぞ

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なんでにゃーごに書くかって?
うちの娘のお気に入りに掲示板だから(笑)。
ねこの掲示板なんだってさ。彼女のインスピレーションを信じているだけ。

狂人の打ち鳴らす鐘高らかに鏡のように光を弾き
人格をすでに亡くしたその人のうつろいゆくはみちゆく人ぞ

そこがおもしろいかのかも・・・ミラーは
Rinさんへ書く九里さんは気分はRinさん九里に語れり

違うな
Rinさんへ書く九里さんは気分はRinさんRinに語れり

こっちが正しい(笑)。

Rinさんになった九里さん今日もまたRinという名の九里に話せり
ラサさんになった九里さん今日もまたラサという名の九里に話せり

Rinさんになった九里さん今日もまたRinという名の自分に話せり
ラサさんになった九里さん今日もまたラサという名の自分に話せり

だから・・・・
自分を消したほうが早いんだけど・・・

あたしってあんなにきつい?今日もまたパロディをみて小首をかしぐ

九里よ九里 真似るのならばもう少し手本みならいセリフをなおせ

投稿者 Blue Wind : 01:46 AM | コメント (0)

cucucu kitigai ga futari と打つ人の狂いた影のあなおそろしきかな

◇暗闇を見る
cucucu kitigai ga futari と打つ人の狂いた影のあなおそろしきかな
沈黙のおもしろければ影の人暗闇のなか糸をあやつり
一瞬の幻さえも映しゐだす闇夜の月のおぼろに光り
電子文字箱に描けるこころ文字独り言だにクリアにみゆる

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見てしまったんですよ・・・
見るべきではなかったかもしれません。
誰かのこころの暗闇なんて。
その瞬間、本当に気持ち悪い人はそういう闇の狂気だと思いました。
磁場が悪いのかもしれない。
それでいて、ひっそりと影を潜めながら狂気はいつまでも暗い世界を描いてしまう。
悪意というものは、概して、そうやってひっそりと存在するものなのかもしれません。
その人にしてみれば、無意識なのかもしれないし、悪意だとは思っていないのかもしれない。
でも、真夜中に黙ってそうやって打っているんですよね・・・

あーやだやだ、きもちわる〜〜〜!
うちのサイトには来てほしくない・・・

でも・・・・・
そういうのを見るのがおもしろいから、見世物小屋なんだろう。

あの人ヘン、この人ヘンと笑ってる そういうあなたが一番おかしい

投稿者 Blue Wind : 01:39 AM | コメント (0)

November 17, 2003

母の死を自分のせいとおもいこむ小さき長男目つきのけわし

いとしいとし吾が持つものゝ何一つほろぶるなかれけがさるゝなかれ
今井邦子さんの歌

コメント「あなたが守りたい人がいるように。あの人もあなたを見守っている。」

   ★歌葉の「今日の歌」より
       http://www.bookpark.ne.jp/utanoha/


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子どもは素晴らしいですよね・・・
あっという間に変わっている。
「もうNちゃんはおとなしいよ」
あーこのまえまで母さんを亡くして荒れていた男の子も成長したんだなぁ・・って感心してしまう。

交差点うつむき加減でゆきすぎるあの子の背丈ことしものびゆ

母の死を自分のせいとおもいこむ小さき長男目つきのけわし
「またあの子」授業参観ちかづけば風のたよりがながれてゆけり
泣きじゃくり父と立ちたる玄関で怯えることのかそけきさまよ
叱れれば終わることさえ叱れぬは罪の深さに泣きじゃくるだに
神経のとがったさきの教室で教師とはなすを避けてとおれり
学校といふところでは加害者もまた生徒なり明日こそあらば

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◇酸欠状態の金魚のような歌
気分屋のすぐに忘るる過去などを拾い集めてどうするやもと
ベクトルを刺激にあわせ変はる脳たまにはわれに休息をくれ
酸欠に仰いでしまう金魚かなパクパクお口で深呼吸なり
巨大魚に変身したりデメキンの不気味におよぐみどりの水よ
縁日にすくってしまった金魚たちふくろの中ですいすいおよぐ
枠だけになつてしまつた金魚あみいつまでつかふ慣れたる手つき

◇最果ての記憶
最果てとなぜに呼ぶなり雪の降る無人の駅さえ汽車は停まりぬ
空電車のんびり車掌の回り来る行き先をどこにするかと母の声
降り立てば宿はあるなり最果ての汽車はガタゴトレールを走り
ガタゴトと揺れる線路の音を聴く高校生らの一駅乗りぬ
ガタゴトとすでにどこかもわからない幼き日の音今も聴こえり

ボツにしろよ〜(笑)。

投稿者 Blue Wind : 01:20 AM | コメント (0)

November 16, 2003

にんまりとどちらが好きと訊く吾子は選挙の声の真似をしてみせ

昼下がりターミネーター歩いても誰も気づかぬつくばの森よ
夕焼けのオレンジ色の輝けるそんな時間に真っ暗な吾

子と夫とのふたつ並んだ寝顔みておなじ角度と感心しせり
朝を待つ中途半端な時間にはカフェの曲だけ透きとほるよう

ひとかどに反抗的な自分にはしずかなうたが浮かびくるらむ

水槽で寝ている魚藻の揺るる飛び出すやうに群れは動けり

まいにちをドラマのように生きてみたいバーチャル泳ぐさかなは死なず
ハンドルをいくつかえてもおなじひと癖や匂ひややけこげの瑕疵
えにしなどチョキンと切って爽やかに涼んでみたいな潮騒の中
箱の中飛び出す歌の情けなさ切っても切ってもトカゲのしっぽ
青林檎りんごタルトの味がするこの酸っぱさは君のものだよ

飛び出そう広い世界へ無限大いのちの不思議在ることの意味

わが叫びどこかへとどけ知らぬ人電子は描く未来のみちを

掻き消して嫉妬のほのお子を語る愚かな女愛をほしがり
子をおもふ気持ち夫にいふ妻の手に高い飲み屋の請求書あり

ジャンキーのたはごとながめくるいだすくやしいといふかなしきをみゆ
死んだなら何にでもなるみほとけのたましいありき成仏できず
あらしとはかごとのうずのまよひごと知らぬかおして橋をのぼれり
生き地獄とほくにながむネットかな屍のまま土に横たえ

今日の鳥ご機嫌ななめに鳴いているラテンのリズムに合いの手入れて

けしの畑ふわふわ歩いていくようなまどろみのなか文字はあらわる
風船のはじけて飛ぶは針の穴はじける音にひとは驚き

片足を微かにひくわれを連れ海の世界をフィンでおしえり
赤信号六本木通りを渡りきる世界制覇の夜明けの渋谷
子どもなど要らないという君の嘘かへすがへすは日曜日に知る

ひとかどになまけ者の自分にはタイヤの音に雨を知りたる
やみゆくひ射す陽を待つや秋晴れのおそとの色のふいにかがやき

タイフーンいまかいまかとまつよりも知らないうちにニュースが告げた

おなじことなんどもはなすネットかなだれに言ったかおぼえていない
質問に自動にこたゆならいせい先生という宛名をながむ

あたへられし薔薇の花さえ君をまついつが春かは天のえそらに
歯を立てて無駄を知るなり人の世の生きる生きると魂の死す
閃光のきらめくような轟きへ導きたまえホーリー・スピリッツ
魂はわが人となり永久(とこしえ)に愛する人と共に生きたり
骸骨のにやりと笑う墓の中蓋は閉められ骨は踊れる

細胞に星をちりばめ生きるわれ土は星かな母なる海よ

悪夢より解放されしわれなればヨハネのごとく夢で叫べり
妄想の夢の中まで忍びよるむすめフテ寝す母のおバカに
妻の名を犬につけると騒いではウキウキしてる憐れなあいつ

月光のしづかに光る宇宙にはやみも光もないというらし
宇宙(そら)の色色相環のどまんなかベージュかグレーありてなき色

真夜中に空手見るため夫を起こすソファにごろ寝明日まで待てず
惑星の浮かんだようなピアノ曲ソファの向こうに空手番組
極真を検索しろとせっつかれ早く寝てよと箱を案ずる
住む世界ちがうと思って20年うすらぼんやり星はまわ〜る

あまりにもつまらぬことの多ければひねもす流るるジャズを聴きたり
ヘデラよりすっくと伸びる萩の花のこり僅かに紅紫咲く
陽だまりにのんびりジャズとコーヒーで今日の気分を占うかな
たちのぼる朝霧どこやいずるやと午後の晴天草ゆれるだけ

月にさえ裏と表があるのなら狂気の夜もしづかにひかる
おもてがおあるよ月にとひの照らす色なき世界なぜにやみめく

半島にぽっかり浮かんだ白い月青青い空雲さえ見えぬ

閑散と空室ならぶ青山を吾子の手を引き懐かしくもなく
そのやうに生きたいのならそのやうに生きる世界が与へられなくに

銀河系太陽といふ星に住むその人ならば核もむなしく

惰眠するそばに来てまで話すなよ きのうの話のつづきのつづき

自由すら不自由であり囲いする狭き自分の生簀の庭よ

アラビアのサウンド聴いてミントチャイ裏の店なら600円なり

堤燈を吾子は知らぬや夏祭り小さなろうの手に入れざらまし
こうこうと明かりの燈る夜道は白きカーテン空にひきたり
ぱちくりとつぶらな瞳ゆびちゅぱのなおらぬ吾子のなにを見つむる

へそ曲がり言っても無駄な屁理屈を暖簾相手に曙っぽく

生きるのに活字のいらぬ生活の通じぬ言葉のありがたきかな
風ほしく雨のいらぬやふねのなかかわれる海のいろ眺めたり

すきとほるやうな空なり見つめれば紺にも黒にも白い満月

アラビアの女になれば見えるのは黒きベールと瞳だけかな

包帯をミイラのように巻きたるも車椅子乗る人の明るき

いつのまにスプレーマムの咲きたるや種のどこから来たりしものかな

時はなおガラスのように崩れ去り 轟きに泣き 震撼に泣く

朝起きて今日が別れになったらとうすき陽炎たちのぼりゆく

ひねもすを書くともなしに書いているつぶやきなるをうたといふのか
詠もうとて詠うているわけでなしああこの時間地震のとどろく
関東の揺れるは日課歩きたる娘はなぜに地震にきづかぬ
真夜中に大揺れしても気づかない寝息高らかのんきな親子
震災の対応悪さ怒れども国会議事堂東京にあり
ものかきといふ職業の人たちは職場にひとつ缶入りのハム

庭に啼く奇妙なことりピーピーとたれに話すかわれはこたえぬ

いくつものこころの墓場のぞいては墓石の文字の雨に打たれり

生簀の鯉泳ぐをながむ優雅さにバリのホテルでサンダル鳴らす

アンニュイに画面ながめてむせびをり草はゆれたり弧を描きつつ

すいすいとおよぐさかなを見てくれる隣の人に感謝をおぼゆ

いたずらに書初めしたる父の文字机の中にしづもれながら
吾が過去を探検しせり書斎部屋吾子知らぬ吾を友がみつけり
想い出のたくさんつまった本棚に探検家らの無邪気な奇声
過去の名を書棚の隅より見出されわが名を不意に思い出したり
母といふ名もなき吾にあたはれた姓とはたれの名と今をみつめる
子もなくば母といふ吾なかりせり母といふ吾吾子と生きたる
夫がいてぞ妻と呼ばれるわれのあり彼の人なきは虚空の藻屑

いろのない口紅つけて似合わずに青白いかおに鮮やかな紅
パール入りヘレナ・ルビンシュタインの小瓶のかたちにいまを感ずる
シンプルな紅い器のひかりたる過去のルージュのベージュに変はり
ささやかに変化したりもかたくなにとつぜんかわる大胆ルージュ

マヨ味のかっぱえびせん柿入りのマリネに挑戦不評に終はる
柿ひとつサーモンマリネに落とすだけ何かがかわり何もかわらず

またひとつ銀河の果てに星ひかる128億光年超す
あの星に願いをかけてみたけれどなん億光年さきのことかな

清らなる幼子の手に握られた野のコスモスの季節を告げる
公園の傍の空き地に咲く花のいろどりの風たれをしのびて
今もなおブルーサルビアしだれたるウッドデッキの朽ちれるままに
風よ風 吹けよ吹け吹け野に山に我が家の庭にも見知らぬ花
ひょっこりと花を咲かせりスプレーマム君はどこからおとづれたるか
寒椿今年はいつに咲くのかと冬を待ちたるここちするかな

乱れゆく言葉の波の押し寄する荒き浜にて波はかへりぬ
枯れ草の春を待ちたる野の夢の新芽の出るをしづかに待ちぬ

セクハラも極めてしまえば九里の歌きょうもきょうとて鐘がなるなる
脳ペンギン無限の宇宙をさすらへば永遠(とは)の夢にぞあはれをわする

巻き舌の歌の鳴るなりけふの朝ラテンイタリア英語と笛と
君のことラテンフレンチドゥドゥと勝手に呼ぶとセクハラとなり
フラウといふ宛名にかしぐ若き頃ミセスと訳すを間違いと知る
妻といふ訳語をもたぬフレンチの少なき語彙にあまた意味あり
vousとduでは表情さえもちがふのでduの人あてにvousで応えたり
セクハラもラテンとおもへばなんのそのしつこさだけがちがふと知るぞ
カンツォーネ今日の昼にはあますぎる時代遅れの県立記念日

澄みゆかむ遠きむかしの想い出はあれよあれよと風に変われり
風のごと息し風さえむせびゆく有害としるシガーのけむり
にんまりとどちらが好きと訊く吾子は選挙の声の真似をしてみせ
おじさんと知るやかなしき宣伝カー オウムでさえもギャルを乗せたり
歌詠みのいつ尽きぬとも呟きは明日があるとは思はぬ今日に

土浦に初めてやつてきた日には店の8時に閉まるにおどろき
浦のそばマンションの立つ川面には三段跳びする鯉におどろき
アマゾンの巨大な蚊かと思う蚊はフラフラ飛ぶやたよりなきまま
吾子抱きて地下鉄に乗りぼんやりと眠れる人のすがたの映る
常磐線慣れぬ言葉の広がるも席立ちゆくや目の前の人
危ないと叱られし傘吾子の前「あんたが母か」とじいさんわらう
ベビーカーのんびり押してお買い物見知らぬ人が吾子あやしたり
デパートで迷子になるも日課かな手を引かれつつ吾子のもどれり
ふるさとの言葉の意味をまなびたる見知らぬ街のゆきかうひとに
つくばねのロケットのそば住みたしと川面の街を不意に飛び出し
飛び出せば見知らぬ世界のわれを待つ宇宙も忍者もつくばねの地に

荒波の打ち寄す西の岸辺では太陽さえも雲に覆われ
風つよきデッキの窓の覆われる海側の部屋雨季のタイかな
ハンモック忘れ去られり風の中誰もいずともふんわりゆらる
常夏の東海岸プーケット海中の橋のんびり渡る
小魚の影のゆれたり海の中かがみこむひと避けて通れぬ
輝ける海を背にしたウェディング軍服の婿花嫁を抱き
正装の輝くシルク黄金色先頭あるく美しき女(ひと)
砂浜を高いヒールで歩くのを遠目にながめ海は広がる

鮮烈な月の光の覆わるる北の空から雲の流るる

落陽の海の向こうの島影にいつ沈むやと缶ジュース飲み
二人乗りバイクの音の鳴り渡る島の外れのサウンドの中
コンビニの閑散とした店の中みやげもの見て一周したる
モンスーン吹き荒るる海白砂を削りてやまぬ坂道の浜
この海のなだらかな顔そしらぬと打ちくる波の泡立ちやまぬ
嵐とはかくもつづきぬ晴天の浜辺の風の凄まじきかな
うららかな日差しの中を馬歩く荒れ狂う波そしらぬ顔で
モンスーン慣れてしまえば気にならぬヤシのパラソル風に吹かれて
闇のなか激しい雨の降りつづくヤモリの歩くヤシの葉のうえ

おなじ浜かよいて詠う歌詠みのうつろう波をじつと見つめり
海の声風のささやき一晩中朝な夕なと朝な夕なと
覆われた雲の晴れ間を待ちぼうけ薄日の中で日はくりかへし
あの山を越えれば何が待つやもと幼き日には山とも思わず

あの海にそそぐ流れのひとしずくわれの涙かとほおくの雨か
今は秋雪の便りに驚きつ常夏気分でトーマス・ラング
晩秋の青き風吹く空あおぎ明日はどうなるものかとおもひ
ああこれが恋といふものと初恋のふんわり浮かぶ或る日の朝に

あの星のさきにも広がる空間のはてしなき夢ひとはすすめり
夢ならば光よりさきにとどくかな星の彼方へ願いをのせて

ふにゃふにゃに融けた白菜なべの中しんなり梨の冷えて眠れる
生まれてはやがて消えゆく生き物の変はり果てたる冷蔵庫かな
そらの雨いつしか土にしみゐたり花つゆひかりはじけるをみる
死後のことあれこれおもふさだめかなひとと生まれしつゆになるやも
雨粒をひとひら憂くし彼の人のかはりになるか人といふもの
純粋に生きるをかたくおもはなばそらの雨さえ塵をふくみし
夕やけのなぜにあかあか輝くと空気に訊くや雨そら見あげ

はらはらと季節外れの詩をながむ中也と昼夜をおもひてうたふ

投稿者 Blue Wind : 12:15 AM | コメント (0)