October 18, 2004

題詠マラソン2004, 083-101

083:皮
隠れ家に入りてゆく道あるようなざくろの皮のさびしき小粒
084:抱き枕
犬を抱き枕にしては顔のうえ小さな肢で目覚ましがわり
085:再会
札幌に「再会」という店ありき真珠の壁の地下鉄の音
086:チョーク
カラフルなチョークの粉のわびしけれ青い文字書きパラパラ落とす
087:混沌
混沌とすすむ道さえ混沌と朝霧のなかひかり射しにき
088:句
句読点いまだ迷いつ打ちたれば迷子のように別れゆく文字
089:歩
まどろみに歩くことさえ難ければハンドル持ちつなおまどろみつ
090:木琴
おぼろげに木琴たたくウブド風そうじゃないよと笑われながら
091:埋
早起きに埋もれながらひとりごと地震情報ぼんやり横目
092:家族
ミニピンが家族になってファミレスも入れなくなる散歩道かな
093:列
列あらば並んでみよと夏の日は暮れゆくばかりながめゆく人
094:遠
もう夏は遠く過ぎたと値札みて感じるきゅうり刻みし夕餉
095:油
バルサミコ、オリーブ油のサラダには塩も胡椒も寂しすぎるさ
096:類 
パスタ類かんべんしてよ芯ゆでのちがいを感ずイタリアの味
097:曖昧
風のみち曖昧なそら森のつき浮んで消えてふうわりと過ぎ
098:溺
サングラス落としたくないそれだけで溺れてしまった愚かなあたし
099:絶唱
耳のうえおつむのうえを飛んでいく絶唱の曲目のなかの帯
100:ネット(「インターネット」の略語としてのみご使用ください)
ネットには飽き飽きだよと思いつつテーブルのうえ文字は現れ

101
駆け足で通りし道をふりかえる余裕もなきか落雷の音

投稿者 Blue Wind : 05:11 AM | コメント (0) | トラックバック

October 13, 2004

題詠マラソン2004, 037-082

037:愛嬌
パグ犬はものがなしくも愛嬌の浮かべるしぐさ生まれたままか
038:連
くりかえし流れる曲の陽だまりで連なるクルマ途切れるを待つ
039:モザイク
あらしの日モザイク窓をワイパーでぬぐえど道は信号色に
040:ねずみ
檻の中ねずみのしっぽピンク色わすれてしまった記憶に眠る
041:血
血も出ない痛みの出づるわが爪を切るももどかし腫れというもの
042:映画
映画さえ腹が立つのか戦争はえらぶタイトルハリウッドなく
043:濃
濃すぎると聖母子の絵を眺めては赤ちゃんの顔怒っておりし
044:ダンス
くるりんとダンスしている吾子眺め買い物の手を宙に浮かせし
045:家元
家元をたどっていけばシナゴーグたどりつくかな聖書読む夜
046:練
いつひさし練馬ナンバー見なくなる道路をおもうつくばねの秋
047:機械
夜明けには機械仕掛けの人形は他人のようにうた詠みいづる
048:熱
サンダルの色の溶けゆく黒絵の具砂浜の熱足裏を染める
049:潮騒
潮騒の流れゆく夜は明るけれ寒き砂辺の終わらない夏
050:おんな
小おんなになってしまった吾子をみし水着の種類使い分けては
051:痛
痛みすら忘れゆくかなしづしづと影なる言葉すぎゆかば秋
052:部屋
雨垂れを耳にもとむか部屋の中虫の音さえも聴こえない夜は
053:墨
筆の先割れているなと思っても床のうえさえ墨書かれては
054:リスク
翼さえリスクがあると窓の外ながめてみても青青い空
055:日記
絵日記にビキニ描くなよ夏休み宿題を持つ吾子を見送り
056:磨
歯磨き粉液体にしろと電動は余計な仕事増やしてくれる
057:表情
寝たきりの母の顔つきながめては言の葉なくも表情変わる
058:八
八の字をハの字とならべ敷島は微かな笑みを文字につたえり
059:矛盾
がさごそと宿題やるか題詠は機械のような自己矛盾かな
060:とかげ
芝庭のとかげの影におどろきぬながき月日を共にいたのに
061:高台
隔たりは坂をのぼれり高台の崖のうえからみおろした波
062:胸元
胸元のクロスの丈をながめては縦横そろふ水平線さ
063:雷
ウンブリア声なき光落雷の広き空さえ迷い雲かな
064:イニシャル
イニシャルをおそろいにして親子かな生まれたときから変わらぬ不思議
065:水色
水色はバケツ色かな透明な水のなきまま短波長あり
066:鋼
塾通い思い出すかな鉄鋼の錆びた階段苦しげにあり
067:ビデオ
伸ばされたビデオテープをかなしげに手で巻きもどす無為というもの
068:傘
ジャノメ傘何と訊かれてわたくしも知らないくせに知ったかぶりさ
069:奴隷
自由とは奴隷のためにあるのかとアメリカを思うイラク戦争
070:にせもの
にせものの白いヴィトンをながめては新作を知るピザの斜塔か
071:追
目で追いし風のゆくえはかさこそとしずくまじりの月桂樹へと
072:海老
地中海老人つどう教会は白い柱と真っ暗な闇
073:廊
回廊をのんびり歩く遠回り割れたサンダルひきずりながら
074:キリン
あかんべをさせたら怖いキリンかなやさしき眼子らにそそげり
075:あさがお
あさがおのいつしか消えゆ裏庭の人の戻らぬ秋をむかえし
076:降
水たまり気にして降りる駐車場ぴしゃぴしゃ跳ねる雨も楽しき
077:坩堝
とかしゆく坩堝の中の灼熱におよぐさかなの幻を見る
078:洋
茫洋にあけくれた海ながむればあけくれた空ただ広がりぬ
079:整形
整形もかなわぬツツジ気まぐれに咲くのを待つか伸びるを待つか
080:縫い目
脳天がとんぼのように止まってる静止したまま縫い目なき日は
081:イラク
イラクにはグロい景色が似合うのか戦野一夜あけゆくばかり
082:軟
ほほえみの軟らかな夢みし夜は帰らぬ日々の朝をむかえり

投稿者 Blue Wind : 01:53 AM | コメント (0) | トラックバック

March 28, 2004

題詠マラソン2004, 031-036

031:肌
肌いろは輝度のちがいと知りてやも黒くもならず白くもならず
032:薬
薬ゆび少しだけ長いゆびさきはやけにみじかい小ゆびとならぶ
033:半
半分はあなたのために半分はだれかのためにわたしはきえる
034:ゴンドラ
森のうえしずかに浮かぶみかづきをゴンドラにして星はかがやき
035:二重
愛と欲二重螺旋の構造は男と女ややこしくする
036:流
激流をおそるるような渦巻きをもう見ることはない ドラム式

投稿者 Blue Wind : 06:43 PM | コメント (0)

March 26, 2004

題詠マラソン2004, 021-030

021:胃
キャベジンの匂いなつかし胃腸薬緑のカエル今もあるかな
022:上野
地下鉄の階段下りる上野駅コインロッカー空間にあり
023:望
ありふれた虹さえ見えぬ希望とは雨のない国ふと思い出す
024:ミニ
ミニ・ピンのステッカー貼るクルマには首輪もしないオトを乗せたる
025:怪談
今は春今宵はさむく十六夜へば真冬の夜の怪談のやう
026:芝
荒れ果てた庭にしたるは芝の種うっかり撒いたあの夏の日か
027:天国
階段をゆっくりのぼる海のうえ逆巻くような天国の音
028:着
棘棘と棘の服を着るように薔薇の木の棘チクチクと刺す
029:太鼓
テンツクテンツクテンツクテン飛び交えば太鼓のリズム錯乱の耳
030:捨て台詞
えいままよかっこよくなど言えないわ言わないでみて捨てゼリフなら

030:捨て台詞(再投稿)
えいままよかっこよくなど言えないわ言わないでみて捨て台詞なら

投稿者 Blue Wind : 11:05 PM | コメント (0)

March 02, 2004

題詠マラソン2004, 009-020

009:圏外
受信機は大気圏外お話中留守電いれて60億人
010:チーズ
パイの中細切りチーズ散らしては味が違うと意味なく思う
011:犬
雨の日は犬さえ眠る朝の部屋うすぐらき中寝息を膝に
012:裸足
ガラス片裸足のままに突き刺さる小さな粒を投げ捨ててみる
013:彩
藍色を無彩色より透明に溶かしてみたいバケツの中で
014:オルゴール
オルゴールメランコリック踊る服汚れたピエロ買った日から
015:蜜柑
冷凍の蜜柑を買って旅立とう汽車は遠のき駅のない街
016:乱
乱気流シートベルトを締める音カチカチ鳴って眠れない夜
017:免許
初運転国際免許のなつかしき戻せと言われそのままにする
018:ロビー
ロビーでは潮風の吹くテラスへととけこむように座っていたい
019:沸
沸沸と浮かぶ雲さえ虚ろげにまぶしき陽浴び夕暮るるまで
020:遊
くすくすと笑い転げてみたけれどちょっと遊んであかんべをする

おかしいなぁ・・・・・なんで、題詠マラソンとなると悪魔の歌を放り込んでしまうのだろう。
破壊衝動に駆られている気がしてならない。
これが、自分の歌と思われてしまうわけ?
いいけど、別に。

投稿者 Blue Wind : 08:50 AM | コメント (0)

March 01, 2004

題詠マラソン2004, 001-008

001:空
あの空はいつも変わらず浮かんでる地球の色か青蒼き空
002:安心
まどろみにうつらうつらと安心を手探りする枕の匂い
003:運
幸運と好運ってのは違うよと教えてくれた不運な女
004:ぬくもり
ぬくもりのとどかぬ土にしづもれる水仙はまだ春を告げずに
005:名前
名前すらわすれてしまうときどきに浮かぶ過去よりおとづるる人
006:土
赤土に覆われし地もはらはらと生きし枯れしと黒土となる
007:数学
数学のテキスト文字のうすらわらい問題集のせせらわらう声
008:姫
”姫”という隠語をながむネットかな悪魔がわらう親父がわらう

投稿者 Blue Wind : 10:02 AM | コメント (0)