October 13, 2004

題詠マラソン2004, 037-082

037:愛嬌
パグ犬はものがなしくも愛嬌の浮かべるしぐさ生まれたままか
038:連
くりかえし流れる曲の陽だまりで連なるクルマ途切れるを待つ
039:モザイク
あらしの日モザイク窓をワイパーでぬぐえど道は信号色に
040:ねずみ
檻の中ねずみのしっぽピンク色わすれてしまった記憶に眠る
041:血
血も出ない痛みの出づるわが爪を切るももどかし腫れというもの
042:映画
映画さえ腹が立つのか戦争はえらぶタイトルハリウッドなく
043:濃
濃すぎると聖母子の絵を眺めては赤ちゃんの顔怒っておりし
044:ダンス
くるりんとダンスしている吾子眺め買い物の手を宙に浮かせし
045:家元
家元をたどっていけばシナゴーグたどりつくかな聖書読む夜
046:練
いつひさし練馬ナンバー見なくなる道路をおもうつくばねの秋
047:機械
夜明けには機械仕掛けの人形は他人のようにうた詠みいづる
048:熱
サンダルの色の溶けゆく黒絵の具砂浜の熱足裏を染める
049:潮騒
潮騒の流れゆく夜は明るけれ寒き砂辺の終わらない夏
050:おんな
小おんなになってしまった吾子をみし水着の種類使い分けては
051:痛
痛みすら忘れゆくかなしづしづと影なる言葉すぎゆかば秋
052:部屋
雨垂れを耳にもとむか部屋の中虫の音さえも聴こえない夜は
053:墨
筆の先割れているなと思っても床のうえさえ墨書かれては
054:リスク
翼さえリスクがあると窓の外ながめてみても青青い空
055:日記
絵日記にビキニ描くなよ夏休み宿題を持つ吾子を見送り
056:磨
歯磨き粉液体にしろと電動は余計な仕事増やしてくれる
057:表情
寝たきりの母の顔つきながめては言の葉なくも表情変わる
058:八
八の字をハの字とならべ敷島は微かな笑みを文字につたえり
059:矛盾
がさごそと宿題やるか題詠は機械のような自己矛盾かな
060:とかげ
芝庭のとかげの影におどろきぬながき月日を共にいたのに
061:高台
隔たりは坂をのぼれり高台の崖のうえからみおろした波
062:胸元
胸元のクロスの丈をながめては縦横そろふ水平線さ
063:雷
ウンブリア声なき光落雷の広き空さえ迷い雲かな
064:イニシャル
イニシャルをおそろいにして親子かな生まれたときから変わらぬ不思議
065:水色
水色はバケツ色かな透明な水のなきまま短波長あり
066:鋼
塾通い思い出すかな鉄鋼の錆びた階段苦しげにあり
067:ビデオ
伸ばされたビデオテープをかなしげに手で巻きもどす無為というもの
068:傘
ジャノメ傘何と訊かれてわたくしも知らないくせに知ったかぶりさ
069:奴隷
自由とは奴隷のためにあるのかとアメリカを思うイラク戦争
070:にせもの
にせものの白いヴィトンをながめては新作を知るピザの斜塔か
071:追
目で追いし風のゆくえはかさこそとしずくまじりの月桂樹へと
072:海老
地中海老人つどう教会は白い柱と真っ暗な闇
073:廊
回廊をのんびり歩く遠回り割れたサンダルひきずりながら
074:キリン
あかんべをさせたら怖いキリンかなやさしき眼子らにそそげり
075:あさがお
あさがおのいつしか消えゆ裏庭の人の戻らぬ秋をむかえし
076:降
水たまり気にして降りる駐車場ぴしゃぴしゃ跳ねる雨も楽しき
077:坩堝
とかしゆく坩堝の中の灼熱におよぐさかなの幻を見る
078:洋
茫洋にあけくれた海ながむればあけくれた空ただ広がりぬ
079:整形
整形もかなわぬツツジ気まぐれに咲くのを待つか伸びるを待つか
080:縫い目
脳天がとんぼのように止まってる静止したまま縫い目なき日は
081:イラク
イラクにはグロい景色が似合うのか戦野一夜あけゆくばかり
082:軟
ほほえみの軟らかな夢みし夜は帰らぬ日々の朝をむかえり

投稿者 Blue Wind : October 13, 2004 01:53 AM | トラックバック
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