山里に秋は来ぬみち今年もがすすきの先に枯れ果つるなり
蛾の羽音ゴミ袋から聴こえ出づ外へ逃がせと頼みしものを
わが手では羽音の袋取り出せぬ思案に暮れつ鈴虫を聴く
蛾の羽音夫には聴こえぬキッチンのゴミの袋も闇の静けさ
夕暮るる波に木霊を浮かべたり枯れた丸太の砂に埋もる
のほほんと旅から戻りニュース知る日本の嵐タイの晴れ間よ
払い下げ中古CDブリトニーそんな気分は終わりにするの
カナダ産まつたけつかう土瓶蒸しすだちの味だけほんのり馨る
キーワードねこねこねこの時代かな虎虎虎は阪神ファンか
◇光
さよならと悪魔に告げるあっけなさ光よ光われを照らせよ
言の葉よなぜに遮る人と人省みるなり光の中に
愛の意味どうして訊くののうたりんセロトニンなら薬を飲めよ
ああそうか言の葉といふ物体に愛を重ねる愛たりんかな
光だに静かな愛の広がりし荒野の砂漠バラの咲きたる
空はばら青い薔薇だと君のいふ青いばらいろ空の色かな
おそらじゅう青き薔薇で埋めつくすほんのりピンク雲は夕やけ
青いバラ空にばら撒き埋もれたい海よりいずる雲の木の葉よ
ほらそこに巨大な虹が広がるよ。君が見たのはビルかい?虹かい?
青いバラ夢幻のものと言うのなら、ほら見てごらんこれがバラだよ
青い実のピンクの花びら名無しだよ。ほしかったのは名無しの花かい?
青とんぼ夢の世界に飛んでいる?ほら見てごらんおちびと一緒に
つくっては〜気に食わないと破壊するぅ炉の順番を徹夜で並ぶ
世の中は〜ガラスのコップ1個でもぉひっしぶっこき炎のなかさ
◇庭
埋もれる好きな家具たちインテリア荒れた庭かよイギリス風は?
天然の蓬の生えるその庭を雑草抜かんと言われてもなぁ
秋に咲く蒲公英の根をそのままに春はたけなわ巨大な黄花
ヘデラたちプランターから飛び出して勝手気ままに木陰を飾る
若竹の塀を乗り越えやって来るヘデラ小道の魔法の扉
白小花咲くやバラの木同じ木に根は一つだに花はブーケに
うち沈む枯れたブランコすすきの穂椅子の間に顔を覗かせ
ペテン師のお口上手にやって来る「求む!職人」気の合う仲間
昨日まで自分だった自分より明日の自分の記憶がうれしい
◇九十九里浜の思い出
御宿のよせてはかへす白波に夕暮るるまでたはむれる吾
波の中白砂のうえいつまでも座りたる吾叔母の呼びたる
塩味のおしんこ嫌いと思っても磯の香りのごちそうとなる
鴨川のイルカのショーで水浴びて荒波とほくサーファーを見し
坂道をのんびり降りて砂浜のひみつの海と海女のいふなり
三日月の形の浜の陽の翳るの暗き波間に鯵もいるかな
白砂のどこまでつづく九十九里パイナップルを探してあるく
よく見れば”沖縄産”と書かれたるパイナップルの店屋に並ぶ
ココナツを初めて見たる房総のみやげ物屋のお菓子のとなり
シドニーのマンリービーチをさがせども船着場降り小浜で遊ぶ
太平洋かへすはよせる白波をゴールドコーストの浜辺で受く
思い出の記憶のめぐる砂の城 波はさらうよゆうやみのなか
ちび用のシュークリームが冷えている甘い誘惑ジャズのあとおし
食べようか食べるのやめよか悩んでるそんな自分の無為な人生
ツルリンとふっくらとした父の顔 ろう人形の棺に眠れり
ちちのてのツルリとかたき動かぬを指をのばしつさいごのぬくもり
霊柩車隣のしきりなき椅子に黙って座るわれはどこ行く
雨は降る陽がさす雲の隙間からゆるやかな坂道はつづきぬ
枯れ果てぬ。悲しみもまた運び去る。父の寝顔の微笑むさまよ
バカの壁 どやって崩すアラシかな 「コピペアラシ」も普通の問いか?
世界観おなじ地球に住んでいてなんでこんなに違うものかな
あの人もこの人もみな大真面目互いの世界踏み越えられぬ
◇ラサさまへご返歌
浮世風あはれに吹くや枯野原ススキの穂すら月を隠さぬ
静吹く日あはれあはれと風の泣くうずもれたるはもはや枯れ草
一つだけ残った草の棹になり蜻蛉のいつもとまれるを見ゆ
ペンギン星 なんでじさまは死んでった あの星この星 こもりの詩人
次の世にリーカーネション女の子詩人の可愛いあの子になろう
男の子話し相手にゃならんのと娘のそばに母は住みたり
一人でも育てるなんて百苦労四人もいたら四百苦労?
夕飯の終わるそばから皿かだすじっとしてない君に頼りぬ
これもだめあのひともだめそれならばいっそ自分で詩人になろう?
あたしにさ”高尚すぎる”と言った人 パンピー見おろし堕天使となる
おらおらおらあくまの歌を詠んでみろしきそくぜくうくうしきぜしき
◇cupidさまへご返歌
流れゆくこのひとときをサウンドで歌に詠みたり神代の園より
忠告も愛の証かおせっかい焼くも親切見ぬふりよりも
人生を楽しむことを知る日々を幸せなのと想い出つくる
夢の国死ぬまで続く息づく日われを待ちたり懐かしい人
子育てをあなどるなかれつよきひと世間などなどパンピーと呼ぶ
いやはいやはっきり言って当たり前ほんとは言えぬこころのさまよ
ろうろうと歌会初めの歌を聴く あれも歌かと古典をしのび
はれほれはれ・・・あれっていいとこさがしなの?気づかぬ吾の世界の狭さ
人生を何度も生きるそのためにいくつもの人のあらわれゆくかな
裏側に飛ぶもうるわし違う世のタイムスリップ時空スリップ
発達の遅れし脳の違いあり遺伝のせいか病なりしか
心から嫌いと言っても通じない本心だから通じないのか
三日月を追いかけ走る秋の道下へ下へと落ちては浮かび
梨狩りを怯えてできぬ子に気づく鳥避け響く蝉鳴く山よ
青き実をつけたる花の名を訊くも「学者じゃねえから知らん」らしいや
騎馬戦も徒競走もなくなりし鼓笛隊すら旗持ちもなく
青空に取り残されし親世代拍子抜けせど子等育ちゆく
自分さえどこの誰だか分からぬと哀れなるかなバーチャルの闇
ジャンキーをブロックせしをジャンキーと思わるる吾サイバー合戦
実名を名乗るほうがストーカー?あほかと思うジャンキー地獄
精神の育たぬままに肉育ち群れるサル山愛を知らずに
開通をひかえた駅の地下道を車で抜けて信号停止
今生きる吾を電子に変えたるかインターネット社会といふもの
のんびりと電子の和歌と戯れど文庫の文字の多さに嘆き
吹く風よ とどまることを知らぬのか 海へ空へと山にて思う
誕生日ゆきつもどりつのらくらとあこの未来とわれの過去とを
アザレアの紅に咲く秋タンポポの黄色い花の一つ咲きたり
ああ春よ季節のとまるわが庭の時計の針の狂いし秋よ
”メモリアル”墓場のことと知らねども墓石並ぶ折り込み広告
花さえも狂う秋みち月は冴え三日月・半月・クリアに浮かぶ
月を見て走る夜空のアップダウン大きすぎるか外灯寂しく
◇せりさまへご返歌
トップレス気ままな彼らのバカンスを横目で見やるサングラスごし
あんのんと公約数に埋もれたり小さき輪にもコンセがイルの?
学生を吐き出す駅の向こう側聖橋には誰も向かわず
毎夕にたむろする鳥けたたましフロントガラスの糞公害
ガン告知半年もつと言ったのに三月ももたずあっけなく死す
最後には人の力の及ばぬを知りつのりこえ未知なる旅路
蓋を開け針と糸とをとりいだす10年前に買った針箱
咲く花の気まぐれなるを知る秋にそれをとどめんわが歌のなか
◇cupidさまへご返歌
芸術に終わりなき日のゆくすえにピアノ三昧ウィーンへ向けて
バカの壁 立ちはだかるは脳内のできごとと知る ゆきすぎてみて
電子文字とおりすがるもバカの壁過剰反応するもおかしき
◇あやめさまへご返歌
萩の花露光りたる秋の庭 雨上がり空輝きに満ち
紅に染まる夕空澄み渡る今が秋かとほむらのごとく
魂もたまには浮き輪必要か暮れゆく波に揺られるためには
屋根の上浮かんだ月の大きさに雲さえ見えぬ秋は深けゆく
スーパーの荷物を友に走らせる道さえ月の踊るを眺む
狂い咲く花さえ隠す雑草の生い茂れども雨は降る降る
◇ラサさまへご返歌
紋黄蝶ひらひら飛ぶよ秋の庭 春の庭かと夫に問う秋よ
灰色の空は静かに一面に雨に濡れてた街にも森にも
青とんぼ再び探す秋景色筑波の山にぞ探せど遭えず