May 09, 2007

『冷たい密室と博士たち 』 森 博嗣著


森 博嗣
冷たい密室と博士たち

人間は自分にはとうていわからないであろうことを考えているときが一番楽である。というのは、ひたすら解を待てばいいから・・・

という大昔の退屈な数学の授業を連想してしまうような読みっぷり。
だったら最初に問題があり、その解き方だけを解説してもらって覚えたほうが遥かに時間の無駄を省ける。にもかかわらず、いつも順序だてて延々と説明されたあげく、「はあ?これだけのことだったの??」とイライラしてしまい、しまいにはどうでもよくなってしまうような感覚にしばし浸りながら、何となく読んでしまった。

犯人と被害者の人間関係と動機がわかっていれば、ものすごく簡単なトリックなのだけど、それが最後までわからない。しかも、動機がわかったとしても、そういう動機によってどうやったらこんなに綿密な命がけともいえる計画を立てて実行しなければならないのか、そのさらなる動機というか気持ちがわからない。ナットクがいかない。理解ができない。だから、答えがわかっても、「だからなんなのさ?」的なすっきりとしない後味のわるさが残る。

何が真のミステリかといえば、それを何の疑いも持たずに受け入れてしまう人たちがいる、ということがわたしにとっての最大のミステリかもしれない。わからない小説なんだよね・・・何がわからないかといえば、そこに出てくる人たちがわからない。

で、わからないから、わたしにはわからない、一生懸命に考えてもわからない、わからないから解を待つだけ。
というわけで、何も考えないでよい、という理由だけで、何となく読んでしまう気楽な小説。

投稿者 Blue Wind : May 9, 2007 01:15 AM | トラックバック
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