May 04, 2007

『六番目の小夜子』 恩田 陸著


恩田 陸
六番目の小夜子


久しぶりに小説を読む。娘の本。

ストーリー的には、前半と後半とが微妙にタッチが違い、後半のほうがどこかスリリングで面白かった。ホラーを期待して読めば期待はずれだろうし、謎の転校生が次第にごく普通のキャラへ変貌していき、結局、真相がよくわからないままに終わっていた気がする。

ただ、学校というところが器が一緒で中身だけが変わっていく、つまりは川の流れのようなものでいつも同じ水が流れているわけではないのに川が川として存在しているだけに見えてしまう、ということを、うまく伝えているような気がして、それは学校に限ったことではなく、おそらくは社会という存在がそのようなもので、あるいは生態系というものがそのようなもので、どこかそういった器を客観的に眺めてしまえるようになったとき、作者の言わんとするところがうすらぼんやり見えてくるような気がする。

つまり、実際にはストーリーテラー的な要素としては平凡で凡庸な気さえするけれども、それが平凡であるほどにどこか淡々とした面白さと共感を感じてしまう。一度は絶版となった小説がひっそり息を吹き返していったのは、最初に読んだ人たちがおとなになったからかもしれない。

ちなみに娘がこの小説を読んでいるのは、演劇サークルの練習で一部を使っているから。同じ制服を着て、同じ学校へ通っているという安堵感と連帯感は、互いにまるで知らない者たちですら既知の関係のような気がしてしまうほど。懐かしいような気もするし、今はそれがどこか重荷のような気もするし、一つわかっているのは、同じ小説を読んでいても、娘とわたしとではまるで違うことを考えながら読んでいるのかもしれない、ということ。

投稿者 Blue Wind : May 4, 2007 12:16 AM | トラックバック
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