June 30, 2005

『ワイルド・スワン』 ユン・チアン著

カースト制度の唯一優れたところは失業者が出ないことらしい。少なくても日本がカースト制なら若貴のようなややこしい確執もないということで、若者が転職を繰り返したり、失業に悩んだりしなくてもすむ。考えようによっては国が裕福なら楽な制度なのかも。その代わり就労の義務のない娘はとかく高い持参金をぼったくられ、これにより殺人事件が多発するというのもなぁ・・・きもちわるい。

先祖代々五千年以上・・・歌舞伎どころじゃないね。生まれ変わりを信じているからこそ、支えられている制度なんだろうか。善を積めば来世は上、悪いことをすれば来世は下。バカバカしい、で終わらないところが社会、政治、生活。

ちょうど『女盗賊プーラン』 を読んだ頃、『ワイルド・スワン』 を同時に読んだ記憶がある。昨日、書評を書こうと思ったけどタイトルを思い出せなくて断念した。探せばどこかにあるのかもしれないけど、この手の本はすでに本棚の奥のほうにひっそりと隠れているため探すほうが大変。

ストーリーはちょうど文化大革命の頃の様子が書かれており、祖母・母・娘の3世代に渡るノン・フィクション。軍閥将軍の妾だった祖母、共産党員の両親、そして著者が渡米するまで。プーランは彼女自身が壮絶な運命をたどったけれども、ユン・チアンの場合はまさしく生活が歴史のサンプルみたい。

表舞台となる歴史よりも、その歴史や社会の裏側で、生まれても名前も与えられない女の子とか、纏足とか妾とか、そちらのほうがショッキング。女性の地位という言葉がこれほどシリアスな意味を持ち、それこそ何のために生まれてきたのか考えざるを得ないほど壮絶な差別。そして、中国から見た日本軍。台湾へ逃げた国民党。どうして共産主義が中国で革命をもって迎えられたのか。

読んでいてつらかったのは、共産主義に移行する前の中国社会がどこか日本の古い社会に似ているということだったかも。思想というのは伝わるものであり、日本という国がいかに中国の影響を強く受けて発展してきた国かを感じた。つまりは、良い点だけではなく悪い点もよく似ており、官僚主導型とか賄賂とか女性の地位の低さとか、その他諸々インドを含め、日本社会の雛形がそこここに存在している。

一つわかったのは、中国はそういう自国の旧い体質を嫌い共産主義に移行し、なおかつ今でも日本がかつての旧いスタイルの国だと彼らが思っていることかな。

それが事実かどうか、わたしにはわからない。今でも旧い体質が残っているところには残っているし、それでいて女性の地位がまるきり悲惨なものとも思っていない。女性が自立するということは実は恐ろしいほど社会の根底を覆すほどのパワーがあり、それでいてそれを支えているのは年金制度かもしれないと思うこともあり、孝行者に嫁はなし、という実情を考えると、無血革命が静かに進行していたような気もするし、どうなんでしょう。

が、しかし・・・・

なんか、どうでもいいような気がしている。祖母の時代があり、母の時代があり、わたしの時代があり、娘の時代になる。

投稿者 Blue Wind : June 30, 2005 10:51 AM | トラックバック
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