March 10, 2005

【短歌】 ハイヒール場違いのやうエレベーター待つ人らにはいっときの鬱

みちさきを不案内にも問ふ雲のひとつただよひ春澄み渡る

そろそろと洗濯物を畳んでは母の要る物今はこれだけ
数枚のパジャマとタオル抱えては袋ふたつと春さきの歌
液体のチューブ通したかぎざぎは繕ふことも無駄と知るべし

秋の日のすぐこの前と思ひては寒椿落ち春を待つらむ
病室は西陽の森に向かひてや窓のカーテンいつ開けやらむ
空だけがやけに広がる駐車場月見の晩は冴え冴えと春

まどろんで領収証をながめても確定申告期限は待ちぬ

食堂はいつも並んで同じ顔 に見えてしまう横を通りぬ
看護士の明るくもあり不自然な笑みなきおうな寝たきりの咳
この頃じゃ誰も心配する人のなき慢性の部屋おむつ積む

つるつるの廊下の床をそろそろと転ばぬ杖の点滴の管
花道をとおりゆかめとおむつ買いそこのけそこのけ両脇の椅子
花道をみあぐる視線うつろげに並んでおりし椅子のうへには

ハイヒール場違いのやうエレベーター待つ人らにはいっときの鬱

投稿者 Blue Wind : March 10, 2005 04:20 AM | トラックバック
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