December 31, 2003

赤い花には毒がある?ないない・・・

内在化した自分の発露として、歌があるのかもしれない。
それを誰かに見せるという行為がすでに赤い花であるらしい。
大きなお世話だ。
つまりは、寂しいからたくさんの人に見てもらいたいらしい。
だったらいっそのことロートレアモン的毒素を含んだ歌のほうがマシかもしれないとも思う。

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人間、自分のことに精一杯だと気が付かないことが多いけれども、微笑みながら、「そんなことはあなただけじゃないわよ」と言われたとたん「なるほど」と思ってしまったことがある。

誰でもいいから自分のグチを聞いてほしい。
それだけ。
それだけのことに必死。
でも、考えてみたら、たしかに自分だけが大変なわけではなかった。

同情してほしいはずが、同情しなければならない立場になるほどやりきれないことはないかもしれない。すっきりしないという意味で。世の中は、どうして不幸な人だらけなのだろうと思いながらも、案外、世の中は平和であり、考えてみたら不思議な気がする。

軽やかに、「そんなのはあなただけじゃないわよ」と言い放った人は何も語らなかった。
今にして思うと、それがよかったのかもしれない。何となくそれで吹っ切れたという気もするし、自分が大変だと思うのは単に気分の問題なのかもしれない。

でも、いささか、飽きた。
何に飽きたかというと、不幸自慢に飽きてしまった。
他人の不幸自慢に付き合っているうちに、何となくすべてがどうでもいいような気になってしまう。
ゆきおんなと言われたこともある。理解してくれないとばかりに、自分のことに必死な人を相手にしているうちに、自然とそうなってしまった。他人をうんざりさせたいのであれば、一生懸命に不幸自慢をすればよいということも学んだ。

どうして自分が短歌を詠み始めたのかは何度も書いてきたけれども、どうして短歌なのかと問われると悩む。
詩でもいい。
どちらかというと、詩のほうが好きだ。
にもかかわらず、短歌を詠んでいる。

不思議。

言いすぎないというところが好きなのかもしれない。
舞い散る言の葉の世界で、来る日も来る日も誰かの不幸自慢に付き合っているうちに、会話というものが非常に面倒になってきてしまったのかもしれない。

それと、もともとが理屈っぽい。
理屈が飽和したとたんに、ポロッと何かがこぼれてくる。
何かボソッと言いたいだけ。
それが重なって、いつの間にか歌になっていっただけのような気がする。

慌しくも自分のことに必死な人の会話に付き合うよりも、何となく空でも眺めていたほうが幸せな気分になるというのと似ているかもしれない。喧嘩した後、ヘンに冷静になり、陽の光のせいで部屋の中が黄色っぽいとか、ヘンなことに気が付いたりする。

赤い花だと言われてしまった。
大きなお世話。

寂しいから歌を詠むらしい。
つまりは、寂しくなければ、ローカルにでもおいておけばよいし、一生懸命に自分の歌を他人に見せる必要はないらしい。
そうやって言われるとそうかもしれない。
でも、短歌って詩とはそこが違うような気がする。
一生懸命に自分を説明しようとするには、あまりにも言葉が少なすぎる。
それならば、自由詩のほうが書きやすいかもしれない。

結局、歌というのは、身近な人たちで交わされる文(ふみ)だったということがわかる。
要するに、たくさんを語る必要がない。見知らぬ人に対してはたくさんの言葉が必要となることでも、知っている人なら多くを語る必要がない。単に独り言なのかもしれないし、身近な人への独り言なのかもしれないし、たくさんを語りたくない時に存在している内在化した声。

内在化した自分の発露として、歌があるのかもしれない。
それを誰かに見せるという行為がすでに赤い花であるらしい。
大きなお世話だ。
つまりは、寂しいからたくさんの人に見てもらいたいらしい。
だったらいっそのことロートレアモン的毒素を含んだ歌のほうがマシかもしれないとも思う。
つまりは、そういう傾向が近頃の歌にはあるような気がする。
毒の歌を詠んだほうがリアクションがあるからかもしれない。
それでいて、何となくそういうものにも飽きた。
ニューウェーブや前衛短歌という毒素にもパワーが欠如してきてしまったのかもしれないし、世の中全体が毒にまみれてきてしまうと、そういったものがものめずらしさを失い、いささかうんざりしてくるものなのかもしれない。

一つ二つの毒ならば大したことはないかもしれないけれども、このところ読みを続けているために、あまりにも毒があるものを読み続けると、なんか何も感じなくなってきてしまう自分がおそろしい。それよりもたしかに何気ない日常の歌に、自分とは違った世界を発見すると、何となくホッとする。
ああこういう生活もあるのだな・・と。

でも、それもゆきすぎると川柳になってしまいそうだ。

ほんとに、どうして短歌なんでしょうね・・・
わからない。
自分でも。

投稿者 Blue Wind : December 31, 2003 03:28 AM
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