りりりりりん。待てば鳴かねど秋虫の透きとおる夜は気長伸びゆく
半袖で秋の終わりを迎えればざくろの実生り色水の味
バグダッド、シンドバッドの冒険はざくろのようなルビーを拾う
冒険は果てることなくつづく旅少年の夢弧を描きたる
太陽はめぐりゆけどもかたちには東へ西へ空の旅路か
君死して今何のため嫌われて呪われて肉まつられ拝み
あのように生きるがよしと子らなどに言えるわけなく苛立ちの杜
国のため生きるがよしと蓮っ葉に砕け散ったか野の向こうには
英雄は黒黒として聳え立つ鋭利な刃物つきたてている
野の花よ、森の木霊のいくせんの声にも似たり、風の向こうは
苛立ちは武勲の文字をかろがろと祭ってみては死に絶える、人
公務員減らして増える軍事費に騙されてみて科学立国
軍隊は政府の犬と書いていたあの本の意味老眼で知る
オトくんは勇敢に吠え勇ましく玄関の前飛び出してゆく
マリちゃんは好奇心ゆえドアの横身を滑らせてしっぽふりふり
虚しさをすこし感じるドアの前くらがりの中犬だけ吠える
憤り、遠のいてみて無邪気さが胸につかえた小骨の罪に
英雄に天国はなし英霊は小骨のようにたたずんでいる
濃厚な冬の気配のしのびよるクリスマスにもまだ遠い秋
ふと開くヨブ記の文字にみことばは彼女の記憶、静かに遠く。
時間すら凍ってしまった箱の中開いてみれば青白き空