近頃、ころんでばかりいる。
疲れているせいかも。
最初に派手にころんだのは出勤途中で、道路を横断して歩道に上がらないまま歩いていたら、低くなった歩道に躓いてしまった。グアムで買ったクロックスもどきを履いていたため、靴が地面にはりついてしまったかのように、気がついたら歩道にうつ伏せで寝ていた。
かなり恥ずかしかったが、そのまま起き上がり、腕を上げて歩いた。小指のすぐ下の皮がない。血が流れてきたので、なんとかクリニックにたどりつくと、そのまま流しで傷口を洗い、看護師に手当てしてもらった。
指を動かしてみたら、大したことがなさそうなので、そのまま仕事をしていたら、1時間くらいしてから手首のあたりがズキズキ痛み出した。傷が痛いのか、打撲のせいなのか、あるいは両方なのか自分でもよくわからない。夜、家に戻ってから湿布を貼り、痛み止めのクリームを塗った。
そういうわけで、しばらく手首は動かないし、握力がないため包丁ももてないし、食事も左手でしていたが、さすがに不便なので痛み止めのクリームを塗って普通に動かすことにした。動かさないでいたら今度はリハビリが大変になる。
ころんで骨折する、という話はよく聞くし、実際、同じ時期にころんだという人は、わたしより若いのに自転車から顔面から落ちて手を骨折したらしい。そうなると手は包帯でぐるぐる巻き。
そういう姿では仕事にならない。看護師も過去に2度ほどころんで骨折したらしい。それでも採血をしていたそうなので、わたしも目立たないように痛み止めのクリームを塗りながら仕事をしていた。
***
悪いことは重なる。
やっと手首の痛みがとれた頃、今度は看護師が腸閉塞で入院。彼女は18年前に癌の手術をして胃がない。胃がないことは以前から知っていたが、それが18年前というのは初耳だった。胃がないと腸閉塞を起こしやすいので、今までに起こしたことがないことのほうがめずらしいそう。
それでも突然のことで、そういうときにかぎって忙しい。この先どうなるのだろうと思いながら、深く考えるのはやめて働いていた。
姑さんがきて以来、あれにこれにやることは増えるし、休みは消えるし、ころんで怪我はするし、看護師は入院するし、そうやって忙しい中病院2つを掛け持ちして見舞いに行っているにもかかわらず1週間行かなかっただけで、姑さんに言わせると、わたしは3週間もきていないことになるらしい。
その話をダンナから聞いたとき、わたしは腹が立って誰かが病院へ行った日をカウントしながらカレンダーに印をつけた。すると3日とあけずに誰かが見舞いに行っている。わたしとて、何回も行っている。
つまり、彼女は何も覚えていない。
でも、ちょっと話すだけではボケているわけでもないし、自分のことは自分でできるし、毎日のように洗濯までやり、髪の毛をピンで巻き、わたしが行く日には着替えて座って待っている。
このことも含めて、わたしは深く考えるのはやめた。
***
一週間もすると、退院したばかりの看護師は何事もなかったかのように働き出し、逆にわたしのほうがダウンしている。特にどこかが悪いというわけではないが、あえて言うなら夏バテかもしれない。寒くなったと思ったら急に暑くなり、なんとなく疲れやすい。
わたしがこんなに疲れているのに、もう1人の看護師は土曜日に休暇をとり、友達の結婚式へ出かけてしまった。しかも、今月からフルタイム働いてくれる予定だったのに、いまだに失業給付を受けているためにあいかわらず午前中しか来てくれない。彼女が調べてきたところ、7月くらいまで給付がおりるので、それまでは今のままがいいらしい。
彼女は、前の職場を辞めてから10キロくらい体重が増え、友達の結婚式へ着て行く服がないと言うので、ほかの看護師から服を借りていた。休憩室で試着していたが、似合うかどうかは別として、ファスナーがあがったからよしとしよう、という感じ。でも、本人は案外気に入っていたのかも。
わたしが冗談で、「ネットで検索できるような結婚相談所とかあるでしょ?」と彼女に言うと、「あれは入会金だけでも40万円くらいかかるんですぅ。うちの親はお金がないからダメですぅ・・」と語尾を延ばしながら説明してくれた。
わたしはひたすら驚き、入会金のほかに月会費がかかり、結婚が決まったら成婚料が加算され、結局100万円くらいかかると彼女がまじめな顔で言うので、土曜日は休んでほしくなかったのだけど、さすがに休むなとは言えない状況に追い込まれてしまった。
・・・・・・・・・が、しかし、あまりにもバテているので、この数日間、どうもお仕事さぼりがちです。