July 27, 2006

オーダーメイドのつらさ

昨日、叔母に電話した。
特に用事があったわけではない。
特に用事があるわけでもないのに、しつこく電話を鳴らすのは、叔母がリウマチなのを知っているからだ。電話が鳴っても、すぐには反応できない。

特に用事があるわけではないが、開業する話を伝え、世間話をしているうちに悩みが一つ解決した。

大学病院にいる頃から診ている患者さんは、もう付き合いが長いので、開業する前からダンナの開業先を心配しているくらいだ。遠くなったら通院できない。あるいは、多少遠くなっても我慢して通院するのだろうか。少なくても、そういう患者さんの場合、処方箋を書き写さなければならないし、書き写したとしても必ず来院することがわかっているから、ダンナも労を惜しむ気持ちはない。

ところが、民間病院へ移り、外来は週に1回しかやらないにもかかわらず、勤めが長くなってくれば1日に100人以上は診察しているわけで、それでいて、その中で開業先まで通院する人たちがどの程度いるのかわからないという。外来だから、医者が変わることに慣れているのかもしれないし、それでいて同じ内科でもそれぞれに専門が違うから、いざ自分が辞めるとなったとき、自分の患者さんをどの先生に任せようか、それが悩みどころらしい。それでいて、開業先が近いからといって大した病気ではないと本人が考えている場合、家から遠くへ行く気にはなれないだろう。

・・・・・・というわけで、来るか来ないかわからない患者さんの場合、いちいち処方箋を移すのはつらい。

「だったら、来てくれたときに、また新しく処方すればいいじゃない?」
とダンナに言ったら、叱られた。

正直、わたしには、開業医と言えば、昔の開業医のイメージしかなく、その昔は院内薬局が当たり前だったので、どうせ似たような薬を出すのだろうと考えてしまう。が、しかし、今はもう時代が違う。薬はオーダーメイドの時代だし、開業医といえども処方箋を書き、いちいちその患者さんに合った薬を処方する。

「いくつ薬の数があると思ってるんだ」
と叱られたが、日頃薬を飲む習慣がないために、わたしにわかるわけもない。

要するに、細かく患者さんごとに処方された薬を再び処方するのは非常に困難であり、それこそ慢性疾患の患者さんの場合、検査をしたり、薬の副作用やアレルギーを調べたり、同じ病気でも一人ひとり薬が全部違ったりする。

その話を叔母にしたら、「おくすり手帳を持ってきてもらったら?」と言われた。
目からウロコ。
わたしはその手の類は、大昔、娘の分を作ってもらったことがあるだけで、それすら大昔の話だからすでに手帳がどこにあるのか記憶にない。あったとしても役に立つとは思えないし・・・

が、しかし、叔母のような慢性疾患だと、自分のおくすり手帳はどこへ行くときにも携帯しており、くすりが切れたら大変なことになるし、近所の医者へ行って風邪薬を処方してもらうときですら、今自分が飲んでいる薬を伝えないと大変なことになる、という危機意識が常にあるのだそう。

その話をダンナに言ったら、そんなものは見たことがないという。そりゃそうだろう・・・大抵は、大きな病院へ行く場合には最初から検査するし、処方もそのときに応じてするだけのことだ。その人が日頃どんな薬を飲んでいたとしても、きちんと検査して最初から処方しなおす。しかも、おくすり手帳は調剤薬局が作るために、自分が処方した後のことはまるで知らないのである。

そこなんだよなぁ・・・
まさしく、その辺の意識の違い。
子どもの頃、開業したての医者へ行き、いきなり胃が痛むと言っただけでバリウムを飲まされたことがある。わざわざ検査のために学校を休み、食事を抜き、どろどろとした変なものを飲まされ、レントゲンを撮影した後には下剤まで飲まされる。そこで本当に病気が見つかれば違うのかもしれないが、残念ながらわたしはいたって元気で、そこの医者には2度と行かなかったどころか、大のレントゲン嫌いになってしまった。

それ以来、わたしは胃が痛くても市販の薬しか飲まないことにしている。
本当に具合が悪かったら、病院へ行くさ、と思いつつ、後々その話をダンナにしたら、放射線科の医師だったのだろうと言われた。そのように言われると、いくつか並んだ診療科目のはじっこに放射線科と書かれていたのを思い出す。

つまり、開業医で今やっているようなことをした場合、患者さんからは酷く不評だろうなぁ・・・というのがわかるじゃないですか。意識が違うのだから。病院へ行くからこそ、検査をしてもらいたいという意識が根底にある人が多いだけのことであって、ちょっと胃が痛いからといって近所の医者へ行ったくらいでいちいち検査までされていたら怒るよね。

で、広告の人と打合せでお会いした際、「おくすり手帳をお持ちの方は、ご持参ください」とリーフや名刺の裏に書いてもらうことを伝えたが、ダンナとしては、「自分で移すから、いい、いい」とたじたじしている。
先が思いやられる・・・
開業したら、そんなことは特に言わなくても患者さんのほうが見せるようになるのかも。が、しかし、自分がずっと診ていた患者さんならともかく、他人の処方を見てうれしいはずもなく、ましてやその疾患が自分が専門だったとしたら、どういう気分なのかわからない。

なんか、こう、つまならないことだけど、少なくてもわたしにとっては大した問題ではないことだけど、困ったなーと思うことが多々ある昨今。最初から慢性疾患しか診ないという姿勢ではおそらくは3年以上は赤字続きだと覚悟したほうが・・・

あっさり語るけど、そこまでわたしは我慢できそうにない。

投稿者 Blue Wind : July 27, 2006 11:22 AM | トラックバック
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