風よ、今、何処へ進む風のみち、砂か花粉か何を載せゆく
あしひきの山の尾根さえマンションの蔭に沈みぬ空さえ沈みぬ
少しずつマリアの顔が母親の笑みをふふみてふかまりゆくや
文字さえももたない頃の生き様は国のないまま笑み浮べたり
書いた文字消えないままにのこりゆく世界の果てが国の成り立ち
一つずつ増えて削られまとめられことばあそびは電子の世界
鎌倉の頃に生まれたふたつ屋根よわまりゆかば葺き替えられて
春の日が突然やってきたような厳しさのない春こそが春
ひなあられ山と積まれた節分に季節の色を垣間見る店
文字のない国だからこそ文字だけが自由におどる世界もありき
みかづきが白く浮べば冬の空ざくろの皮の風に吹かれり
少しずつ何かが変わってゆくような地球も今もこいぬの笑みも