October 19, 2005

コンセプト

開業するタイプの先生にもいろいろあって、コンセプトが違うから悩む。

たとえば、ある先生は教授と喧嘩して、要するに自分の研究室をそのままつくりたかっただけ、とか。そうなると私財を投げ打ってでもいいわけ。採算を度外してやりたいことをやっている。広いスペース、最新の設備、そこに大学病院から自分の患者さんを連れてきて、学会発表やら講演やら独立独歩でやっていきたかった。

別の先生は臨床的側面を大切にしている。そこの診療所の図面を設計士さんに見せたら、この動線では相当従業員数がいないと大変になるだろうと言われてしまった。要するに、トイレも奥だし、診察室と検査室が別れているから初診の患者さんやお年寄りは看護師さんがいないとどこへ行っていいのかわからない。

で、その理由を先生に訊いたら、そうしないと看護師さんが飽きてしまうからだそう。

そりゃそうだよね・・・医者の手伝いをしているだけというのでは退屈してしまう。患者さんの世話をしていたり、世間話をしたり、移動が困難なお年寄りを誘導したり、そういう意味でのコミュニケーションがないと看護師はつまらない。

というわけで、そこの診療所はいつも患者さんと看護師さんが賑やかにおしゃべりしている。それが医院の活気なのかもしれないし、おそらくは動線として考えたら実に効率が悪い設計だけど、コンセプトとしてはそのほうが楽しい職場なのかもしれない。

それとか、なんで医者が1人しかいないのに1診、2診という具合に診察室が余分にあるのだろうか・・とか。これは実に不経済なんだけど、先輩が後輩の面倒をみるという伝統により、使わなくてもそういうスペースを確保している先生が多い。別にどこかの住宅メーカーの図面のように親子でやっているからという意味ではない。ささやかなことなんだけど、院長室を医局と呼んでみたり、最初から心構えが違う。

今の職場、働きやすそうだし、サラリーも悪くないし、特に何に不満がある生活でもない。それでいて言葉にはならない退屈さがあるらしい。要するに、自分の持ち場があり、勤務時間帯があり、決まったことを決まったようにやっていればクレームは発生しない。わりに良い先生が多いから、人間関係にトラブルがあるというわけでもない。

それでいてなんで?

おそらくは、人生観というか医師像というか、医療に対するイメージとか、自分が何をやりたいかとか、おそらくは言葉にはしにくい部分のデリケートな問題なのかも。

そこのところを理解してもらわないと、数字の話をしていてもさっぱり先に進まない・・・

投稿者 Blue Wind : October 19, 2005 01:51 PM | トラックバック
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?