April 20, 2005

わたしの父

わたしの父は活字に人生を求めるタイプではなかったので、朝起きると軽く何かを食べ(柑橘類が好きだった)、ハーフを回り、お風呂に入り、それから仕事。そうしないと低血圧だから体調が悪いらしく、それが日課だった。

たまの休日、めずらしく家にいる日に父が観るテレビといえば、ゴルフ、競馬、天気予報、野球、相撲、格闘技、スポーツニュース。たまに、バラエティ。趣味は麻雀。億単位の仕事を爺さんたちが賭ける。それが社交であり娯楽だった。競馬が好きで、当然馬主。

それでいてふさぎこんでいる時もあり、そういう時には発作で旅に出る。わたしの学校にまで迎えに来る。いつも突然。

父は1ヶ月のうち数日くらいしか家にいなかった。いつも仕事で飛び回っていて、母も仕事をしているし、その分父が家にいる日には、絶対的な権限で呼び戻された。家族で過ごす時間というのは貴重であり、その時には学校も仕事も関係なく、どうしてあんなにわがままなのか不思議だったけど、旅行で飛行機に乗る日は必ず4人で乗ることになっていた。そうしないと飛行機というのは墜落するものであるという恐怖が父にあるために、いたたまれなくなってしまうらしい。

こよなく自由を愛し、こよなく家族を愛し、それでいていつもたくさんの人たちに囲まれているのが好きで、家族からすれば厄介な父だった。晩年は癌ということもあり、病院にいることが多かったけど、すぐに脱走する。着替えてタクシーに乗り、近くのギャンブル場へ行く。病人に思われるのがいやなので、病院の裏手でいつも歩く練習をし、それが終わると点滴の管をつけたまま院内を歩き回る。実際、着替えてしまうと病人には見えず、病室から職場に電話をする。医者の言うことなんて聞かない。看護婦がブスだと気に入らない。病人なのにポマードを使っているので、薬物が検出されてしまうらしい。

あんなにわがままな男をわたしはほかに知らない。

それでいて考え事をしている時に話しかけても反応しない。何やらこむずかしいことを考えていることは分かったけれども、そういう時の父には話しかけないことである。子どもが好きで、小動物が好きで、娘は着飾っているのが好きで、美しいものが好きで、美味しいものが好きで、オシャレな人だった。例えば、ネクタイよりスカーフを好むような・・・それが嫌味でないところが父のセンスのよさだった。

・・・・・・・・・・・・・・なかなか父のような男はいないのよね。ジーザス・マイ・ラブ彼氏なの。ためいき。

投稿者 Blue Wind : April 20, 2005 01:02 PM | トラックバック
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