まどろみに浮んだ歌もわすれゆくふかきねむりにおちゆくゆき日
自転車の轍のうえをとおりゆく犬も歩かぬ霙あるみち
ぬくぬくと白い雪降る窓のそと芝目の色のかわりゆく庭
降る雪のななめに走る白い冬身をこごみ咲く淡き薔薇の木
雪のなか傘もささずに遠目にぞ吾子のぬれ髪踊る歩道よ
おそろしい一年だったと画面みるわれはぬくぬく汝もぬくぬく
死んだのは人と建物陸のうえ。海のうえにはボート揺らるる。
波よするパトン・ビーチをながむればそういうことかとビーチは遠く
海はとても怖いよと波くりかえしくりかえし波よする砂浜
浜の砂こんもりとして丘のようなだらかな坂波の山よす
歩くことつらきスマトラ熱帯の狂える波の茫洋の浜
海のうえなだらかな波やりすごす津波の泥は島を襲ひぬ
海は海人は人空高ければ熱き陽射しの照りつける海
ゆるやかにコーピーピーを呑み尽くす波はつばめの巣を空高く
島の孔彫りあぐる波わたしには想うことすら暗い空洞
詩編 51. 12-14
黒雲のスコールの波つつまるる島影はやく遠ざかる船
何事もなかったような青空はいつも気まぐれ一秒の焔
点点と雲と島との違いなどわたしの目にはわからない窓
点点と雲従えて飛行機は降り立つ島を選んでをりし
海賊のCD盤は流されていづこにあるかパトンの沖か
あやふやな浜辺の道はいづこへと遺された人置き去りにする
退廃の泥水のなか椰子の木は呑み込まれつつ風に吹かれり
今は冬夏の想いを描いては雪の残った芝庭をみる
くりかえし波はおとづれ麗かな被災のあとの空高くあり
ハンモックとりのこされた部屋のまえ狂へる波につよき風吹く
箴言 17. 14
水漏れの水すらつたう柱にはビニール張りの風よけの壁
■BBS詠
舞い落つるわくらばさえもなき道に枯れ尾花群れゆっくりねむる