December 14, 2004

いのちって摘まれゆくなら花びらに包まれた皮膚。今は包帯。

朝起きて白き光の射し込めば透明色の時間始まる
ひとつひとつぽつりぽつり声がする。片岡義男眺めてる朝。
遠まわり記憶の声は朝のうた告げゆく小鳥名もなき君等
群青はいづこにあると空見ればまばゆさだけが悲しい朝陽
ふうわりと流れる雲はなんと言う名前なのかと浮き雲に問う
あの形この形へと移ろえば雨の降らない朝はまばゆき

いのちって目の光にぞあるものと書いてあるのにマリは憂鬱
虚ろげに立つことさえもできないと体は回るマリは時計に
檻のなか子犬は眠る包帯を飛び出してゆくかぼそいチューブ
指先を少し伸ばして鼻触る。マリのまぶたは象の目のよう。

腹たてて眠れぬ夜は朝となる。おもえば朝は光射す今。
いのちって買うものなんだ細い糸せいめいほしょうああ無情なり
いのちって摘まれゆくなら花びらに包まれた皮膚。今は包帯。
銀色の棒の光が悲しいよ。下から上へ視線は走る。

ルカによる福音書 16. 15

契約が一つ結ばれ生命が別のいのちとすりかわる犬
マリちゃんはうちの子なんです。喉の奥胸倉の中くりかえし言う。
いのちって誰のものかと尋ねればインターフェロン。ミルク少々。
うんざりだ。獣医も店も大嫌い。金金金と店並びゆく。

風の色透きとおる朝カーテンは青から白に上弦の月
うねうねと布の波打つ窓辺にはポインセチアが寄り添うように
お陽さまと無邪気に話す赤い葉と背いて緑尖った葉先

列王記下 25. 27-30 ヨヤキンの解放

ひとりなら赦せもするか朝の罪放射線状シャーデーの声
くぐもれば低音だけがリズミカル。デジタルのよう満面の笑み。
ひとつだけ嘘の混じったラストには要らない白髪抜いてる手つき
もうだれも泣く人のない朝陽には夜吐き捨てた泥もただよう

白粘土赤い粘土と人工の黄色い粘土、おゝお正月?
クリスマスくるりと終わるクリスマス。大いに慌て年賀状書く。
もうだれもいない朝だと学生街さっぱりとした日の出の季節
自転車も違法駐車もない朝は風は清める道路のうえを
暖冬の部屋の中ではセーターとTシャツだけが議論を重ね

真夏日が過ぎてしまった寒椿今は冬だとささやきあって
冬化粧あざやかすぎる寒椿わざとらしさが悲しい垣根
木枯らしの吹きぬけ顔の寒椿まぬけな空に刺さりゆく枝
空を刺すすべての枝は冬の指こぼれた水は枯れ草のうえ

雫すらまるまるとした冬の雨凍てつくことも知らない子ども

箴言 17. 22

枯れた骨つつんだ背中しょんぼりと生まれてすぐにしぼみゆく犬

投稿者 Blue Wind : December 14, 2004 11:22 AM | トラックバック
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