朝起きて白き光の射し込めば透明色の時間始まる
ひとつひとつぽつりぽつり声がする。片岡義男眺めてる朝。
遠まわり記憶の声は朝のうた告げゆく小鳥名もなき君等
群青はいづこにあると空見ればまばゆさだけが悲しい朝陽
ふうわりと流れる雲はなんと言う名前なのかと浮き雲に問う
あの形この形へと移ろえば雨の降らない朝はまばゆき
いのちって目の光にぞあるものと書いてあるのにマリは憂鬱
虚ろげに立つことさえもできないと体は回るマリは時計に
檻のなか子犬は眠る包帯を飛び出してゆくかぼそいチューブ
指先を少し伸ばして鼻触る。マリのまぶたは象の目のよう。
腹たてて眠れぬ夜は朝となる。おもえば朝は光射す今。
いのちって買うものなんだ細い糸せいめいほしょうああ無情なり
いのちって摘まれゆくなら花びらに包まれた皮膚。今は包帯。
銀色の棒の光が悲しいよ。下から上へ視線は走る。
ルカによる福音書 16. 15
契約が一つ結ばれ生命が別のいのちとすりかわる犬
マリちゃんはうちの子なんです。喉の奥胸倉の中くりかえし言う。
いのちって誰のものかと尋ねればインターフェロン。ミルク少々。
うんざりだ。獣医も店も大嫌い。金金金と店並びゆく。
風の色透きとおる朝カーテンは青から白に上弦の月
うねうねと布の波打つ窓辺にはポインセチアが寄り添うように
お陽さまと無邪気に話す赤い葉と背いて緑尖った葉先
列王記下 25. 27-30 ヨヤキンの解放
ひとりなら赦せもするか朝の罪放射線状シャーデーの声
くぐもれば低音だけがリズミカル。デジタルのよう満面の笑み。
ひとつだけ嘘の混じったラストには要らない白髪抜いてる手つき
もうだれも泣く人のない朝陽には夜吐き捨てた泥もただよう
白粘土赤い粘土と人工の黄色い粘土、おゝお正月?
クリスマスくるりと終わるクリスマス。大いに慌て年賀状書く。
もうだれもいない朝だと学生街さっぱりとした日の出の季節
自転車も違法駐車もない朝は風は清める道路のうえを
暖冬の部屋の中ではセーターとTシャツだけが議論を重ね
真夏日が過ぎてしまった寒椿今は冬だとささやきあって
冬化粧あざやかすぎる寒椿わざとらしさが悲しい垣根
木枯らしの吹きぬけ顔の寒椿まぬけな空に刺さりゆく枝
空を刺すすべての枝は冬の指こぼれた水は枯れ草のうえ
雫すらまるまるとした冬の雨凍てつくことも知らない子ども
箴言 17. 22
枯れた骨つつんだ背中しょんぼりと生まれてすぐにしぼみゆく犬
投稿者 Blue Wind : December 14, 2004 11:22 AM | トラックバック