November 11, 2004

囀りも朝の小言に聞こえたり静寂の中夜は明けてゆく

普通だったら、家庭がいやし。親元に帰ればほっとするのが普通。たしかにそういう一面はあったとしても、わたしの場合は、母の顔を見るともうダメ。たちまち反抗的になり、セロトニンが失われていく。人によってはそれが父親だったり母親だったり、継母だったり、腹違いの兄弟だったり、はたまた舅、姑だったり、いささかそういう違いはあるものの、他人のほうがまだましというケースはめずらしくない。夫婦だったら離婚すればいい。もともと他人だもの。が、しかし、肉親となるとそういうわけにもいかない。

恋愛は楽だ。親は入って来ない。ところが結婚すると、きちんと親がセットされてしまう。
姑さんが来ると、ダンナの鬱々が始まる。うちの親が来ると、わたしの鬱々が始まる。ある意味似た者同士だから一緒にいられるのかもしれない。
ダンナの姉は、一人は子ども無く夫婦で無人島へ行ってしまう。もう一人は近頃大きな犬を2匹飼い、行くと姑さんは部屋からも出られない。うちの弟は母親思いではあるが、それゆえに母とは犬猿の嫁。ああなると誰も近寄らない。それが彼にとっての平和なのかも。

皆、自分を救うだけで精一杯。

ルカによる福音書 6. 20-26 幸いと不幸

まあ、いいか・・・どこも家庭の中はハッピーだから。
愛に飢えているから、自分の世界を守るために必死。

マイホーム親から離れマイホーム苦労はしても独立を得る
ささやかに離れ小島を求めては大家族にて暮らす人ら見
一時期の震災離婚流行たる雲行き遥か今は新潟

スコールを走りぬければ天空は雲一つだに浮んでおらぬ
黒い波白い飛沫をなびかせてボートは走る一目散に
青い空透きとおる波もとむれば島をめざしてスピード・ボート
ビーチには焼けた人らの寝ておりし雨粒一つ知らないように

悲しみをとおりこしては病室は元気な人らの足音響く
寝ていても褥瘡だらけ動かねばなお苦しいと大きな機械
苦しみを知らぬ人らの明るさはカーテン越しの光のごとく
かごと渦沈みつつあれ終いには苛立ちながら電話で怒鳴る

退廃よ、カーテン越しに光る窓、空気のために開かれた窓
どうやって明るい気分で過ごせよか死のたちこめたぎこちない部屋
バタバタと元気な人の足音はうんうん唸る病人の前
死ぬのならひっそりとした窓の下生きているからリハビリ機械

退廃よ、生きて生きてとただ生きて苦しみだけがつきまとってる
畳まれたマットは誰を待っているゆきてかわるは寝ている人ら
慢性の寝たきり部屋におりたれば家族の顔を互いに知らず
急性期治る人らの寝ていれば見舞いの足の絶えることなく

もう何もしないでくれと言いたいが可愛い笑顔実習生かな
新しいリハビリ機械触りたるウキウキとした若き未来か
わが母をいけにえとしてさしだせば笑顔まぶしき働く人ら
未来とは彼らのためにあるものと明るくもあり失望もあり
断層はわれのことかと嘆きたる思いせし部屋立ち止まりたる

ヨブ記 24. 12

静かに死を待つという発想がないからね・・・若い人も老いた人も。何もしなければ明日の朝には死んでいる。だから、何もしないではいられない。なまじか自分の親だから、つまらないこと言えない。このジレンマ。
一生懸命やってくれているわけだ。礼は言えても文句は言えない。なんかじりじりしてしまう。胃ろうは大腸に負担をかけないから素晴らしいことだと説明されれば納得するしかない。リハビリも。生きているからやらねばならない。なんなんだ、このつらさ。自分の時は嫌だと思いながらも諦めている。ほんじゃ、親を番号で呼んでいるようなところに入れたいか?それもなぁ・・
死の臨床・・・・って意識もほとんどないのに。オンオフの世界。作業の邪魔っぽい。
世の中には抗生物質がないからというだけの理由で泣いている人たちもいるというのに・・・このいやしのなさ。神さまにお願いする前に、可愛い笑顔の実習生がやって来る。明るいよ。明るすぎてぎこちない部屋。

ぶらさがる管の数だけ数えても色を見ないと区別はつかぬ
ほいほいと次から次と新しい業くりかえし泣く暇はなし

国にお金が無くなったら、誰かわたしのために泣いてくれるだろうか・・・諦めよう。

断層の静かに眠る胸のうち眠れぬ夜は避ける病室
ひねもすは眩しき闇の披きてはパジャマのために通いゆくなり
ストレスで倒れたいのはわたしだと言いたいけれどタフに生まれし
神経の刃物のように包みゆく主治医の視線互いに逸らし
管の数箱の数など増えゆかば薬の袋また増えており
誰がために増えてゆくのか投薬の袋の数だけパジャマ買い足す
神戸では姑さんがおもしろく元気よさそに家事をしており

コリントの信徒への手紙 一 15. 12-34 死者の復活

だって、薬の数が増えているのに、何もしないって思われたら悔しい・・・

もうダメだ。ストレスで倒れそうだ。元気ですけど。
理屈でも理解しているし、一生懸命によくしてくださっているのもわかるし、これで不満を言われたほうは怒るような気がする。それがふつう。

やっぱ、まめに病室へ行ったり、物資を届けたりしていると、安心感があるのかも。目に見えるから。管も薬もリハビリも。

常識仮面。

ほとんど来ないって悪口言われて昼寝しているほうがまだ救われそう・・・
愛がないというのは憐れみもない。

蹲る貝殻のなか入りたいぱくぱく波を吐き出すあさり
海の泡飛沫の中に紛れ込み砂に潜りて波に消えゆけ
愛のない苦しみは生む愛せない苦しみの海飲んで吐き出せ

囀りも朝の小言に聞こえたり静寂の中夜は明けてゆく

鐘の音の朝が来たれば石の壁冷たくもあり小さな窓辺
旋回す鳩の消えゆく壁の穴雨降らぬ空照りつくす道
木陰にぞ涼しき夏のありにけり熱の病の大地つづきぬ
岩面の憐れみのなか照りかえす半の影踏み並んで歩く
雑踏も紛れゆく鐘聴こえれば誘われて犬店先に寝る
生温き噴水の水教会の水の色似て音なくもあり

朝。

ホセア書 9. 7-9 預言者への憎しみ


◇BBS詠
透かし雲ドラマティックに広がればいろどる秋は風に飛ばされ
スコールのまきちらす雲黒黒と島をのみこみ影のみぞある
透かし日のうつらうつらと茜雲昼の3時に君の面影

投稿者 Blue Wind : November 11, 2004 02:51 PM | トラックバック
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