March 12, 2005

橋本一子

なっつかし〜い!
CDショップへ行き、何となく歩いているうちに、不意に「橋本一子」の名前が目に入る。ジャケットを見て、「あ、一子さんだ」と記憶の中の顔がよみがえる。


アーティスト: 橋本一子, 井野信義, 藤本敦夫
タイトル: Miles Away〜トリビュート・トゥ・マイルス

高校時代ですよ・・・わたしたちが一子さんの家に押しかけてしまったのは。わたしは普通ですからね・・・誘われただけです。

その当時はロックやポップスのほうが好きだったし、卒業記念はビリー・ジョエルのコンサートだった。ぶらんかさんのところで久しぶりに、ビリーの名前を見つけて、くすくす笑ってしまう。
理由?
それは何と言ったらいいのだろう・・・薄かったから・・・後姿が。当時はすごく流行っていたので、わたしはビリーの『ピアノマン』ですら持っていたのだけれども、ある日「わたしは『ピアノマン』が好き」とアメリカ人英語教師のパムに言ったところ、げらげら笑われた記憶がある。
アメリカ人の感覚からすると、ビリー・ジョエルの『ピアノマン』というのは当時でもすごいナツメロで、それを日本の高校生が聴いているというのがすごく可笑しかったみたい。


アーティスト: Billy Joel
タイトル: Piano Man

で、話を一子さんに戻すと、当時彼女はまだ音大生か音大を出たばかりだったのではないかと思う。それが突然実家まで押しかけてしまったのは、たまたま友達の家に近かったのと、一子さんの妹が一つか二つ下の学年にいて、いきなり電話しちゃうのだもの・・・家に・・・わが友が。

幸いにして、お母さんというのが愛想の良い方で、突然の電話にもかかわらず、「家で待っていれば戻ってきますよ」とおっしゃったので、そのまま学校帰りに押しかけてしまった。(こういう時、制服というのは絶対的に強いと思う。)

その時わたしを有無を言わさず誘った友達はジャズが好きで、ベース音ばかり聴いている女だった。そのくせ古文が好きで、楽器と言えばお琴をあやつり、お父さんは短歌の先生。一度だけ夕飯をごちそうになった時、コンソメ・スープの中の野菜が全部自家製だった。彼女の部屋は二階の和室で、大きなお琴と小さな机が置いてあるだけ。とても女子高生の部屋とは思えないシンプルな部屋で、わたしたちはジャズを聴いた。
決して裕福な家庭ではなかったけれども、どことなく風流で上品な家庭。彼女がわが家に来るときの手みやげは和菓子と決まっていた。よくあんなに甘ったるいものが食べられると感心した。

それが、突然、なのだもの。
どうせわが家は親の帰りが遅いので、土曜の放課後にちょっと帰りが遅くなったくらいどうということもない。彼女はいきなり家に電話し、喧嘩腰で怒鳴るように電話を切り、「さあ、行こう」という具合。
約束より少し早く到着し、一子さんの家で待つこと2時間、一子さんが賑やかに帰ってきた。それまでが大変だった・・・お母さまが気を使って電話するわけ・・・一子さんに。「待ってるのよ、早く帰ってらっしゃい」という具合。わたしたち2人が勝手に押しかけたにもかかわらず、あれこれもてなしてくれる。

本当のことを言うと、「橋本一子」という名前を聞いたのがその日が初めてだったわたしは話についてゆけそうにない。それでいて妹さんが同じ学校だったので学校の話とか、先生の話とか、そういうつまらない話をぼちぼちしながら時間を過ごした記憶が。ごく普通のご家庭で、ジャズピアニストという匂いはなかった。

その後成り行きで、新宿でライブがあるというので、お礼に花束を持って出かけて行った。実際に演奏を聴いた感想は、「子宮でピアノを弾いている」としか語れなかった。まだ熱い時代だったのだと思う。それとクラシックのくせがあって、それがどうしていきなりジャズへ転向したのか、高校生ながらそういうことを考えた。

本音を語ると、その当時のわたしはジャズが好きでなかったのかもしれない。もっと本音を語ると、今日、橋本一子の名前を見つけたとき、「まだやっていたのか」と思ったのだった。それでいてジャケットの写真は昔のままで、なつかしさのあまり買ってしまった。

感想?

歳月は素晴らしい!

彼女の演奏を聴いたのは、もう20年以上昔の話になってしまったけど・・・ビル・エヴァンスとトゥーツ・シールマンスの『アフィニティ』をもっとメロウにした曲作りで、カバーという点では最高。

そういえば、その時一緒に行った友達は今東北の片田舎で、さらに風流に暮らしている。彼女の家に無理やりファックスを入れさせたのはわたしだけど、そろそろメールが届くだろうか・・・わからない。母屋と離れのある暮らしは大変なのだ・・・電話をするのも、気を使わなければならない。


アーティスト: ビル・エヴァンス, トゥーツ・シールマンス, マーク・ジョンソン, エリオット・ジグムンド, ラリー・シュナイダー
タイトル: アフィニティ

投稿者 Blue Wind : March 12, 2005 06:20 PM | トラックバック
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