October 30, 2004

あっけなく会って別れて死んでゆくざくろの木の実揺れている秋

大腸癌取ってきたよとチャイム鳴る明るき声に救われる昼
苦しみはひっそりとしたICU目覚めた朝は二倍の時間
つわものよ、泣き言言わずひねもすを生きているよと挨拶に来る
次の日の約束などをしてみればめずらしいなとふと思いたる
笑顔さえ練習したなと疑えど知らん顔して手を振り別れ
ひっそりと暗い闇路をさまよえば明るい陽射し舞台のごとく
あっけなく会って別れて死んでゆくざくろの木の実揺れている秋

民数記 33. 1-4

臍の緒の微かにつなぐ六本木通りの隅は母の胎内
片隅にうずくまるよにすれ違うシーソーの音クルマの鼓動
残骸に積まれた闇をよじ登り生きていたかとつわもののよう
秋の日にざくろをみあげ話すとは長生きしたと思っちまうぜ
死ぬ日まで燃えていたいと太陽は紅く輝き勝手に落つる
闇夜には月が輝くその意味を何となく知る陽は見えなくも
指先に母の匂いのするような消毒液のしみいる月日
母の世話胡散臭げにやっているわたくしを見て笑える人ら
秋の日にざくろ見上げて笑い出すそんな気分の親の世話かな
親の世話二倍になっても変わらんとボランティアかな淡々と行く
親の世話五倍になっても変わらんとまとめてくれと言ってみたしも
三宅さん長生きしたと癌患者スタート地点並んで生きる
最長でどれくらいかと考えて老衰を思う気まぐれな息

エレミヤ書 50. 4-5

水平線迫ってきたかと太陽はおおげさなほどあかあかと燃え
高枝にしがみつくよなざくろの実嵐が来ても驚きもせず
大腸癌取ってきたよと微笑めば嵐の中は寝たきり患者
つわものよ、晴れた陽を浴び話そうと並ぶ尾花の静かに揺れる
やさしさも憐れみさえもむなしけれ陽を浴び揺れる尾花は咲けり
愛という言葉のなくも憐れみは粒子の中に飛び散り咲かめ
ポツポツとこころ閉したるひねもすはよわむしこむしはさんで捨てる
退廃に飽きてしまえばつわものの微笑み来る秋空の下
あかあかと落ちればいいさ太陽は明日があるならあかあかと出る

エゼキエル書 5. 7-13

くりかえし開く聖書のページには神の怒りの嘆きの歌ぞ

投稿者 Blue Wind : October 30, 2004 05:27 AM | トラックバック
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